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忘れられた花人
花人は種から生まれ、それぞれが花言葉を持つ。人が慣れ親しんだものから珍しい稀少な存在、中には新種のものまで数多にある。彼らに死はない。そのため“死”は異端であり、死の概念を持たない。
「――ねえ見てあの子よ。花言葉を持たず生まれてきた意味無し子」
「まあ本当だわ。髪も咎色の夜で、よくお似合いじゃないの」
クスクスと小馬鹿にしたような悪口をあちらこちらで囁かれる。
花言葉を忘れられた憐れな存在だと周りには映っているようだった。――花人は自身の特徴である花をアミュレットとして肌見離さず着飾っているが、自分にそんなものはない。そのため、趣味で集めていた古書の中にあった花を見様見真似で作り、それをアミュレットとして持ち歩いている。効果なんてあるはずもないのに。
母さんは言ってた。
『大丈夫。いつかきっと花開くから。冬の終わりが見えなくても、春は必ずやってくるから――だから誇り高く生きなさい。たったひとつの命を』
ずっと誰からも愛されなかったけど、唯一母さんと呼べた花人だけには感謝している。
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