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また日常に戻る。辛い現実に寄り添って生活を停滞させる。
「…………」
そう思うと苛立ちが募ってきた。負の感情に間違いないが、普段のマイナスな思考と少し方向性が逸れている。口語的に言うなら『ムカつく』状態だ。雨を気にしない程度に体温が上昇する。
「そっか」
すぐに答えを知った。彼は人並みに怒っているのである。死を間近に経験し、過去の出来事が小さな問題に格下げられた。するとネガティブにしか繋がらない思い出が、途中から胸糞悪い馬鹿をぶん殴りたくなったという訳だ。
「そんな度胸ないけど」
無論そのような行動はとらない。行き着く先は損以外の何物でもない。ただ湧き出るイライラを抑えるにはどうすればいいか、と悩むほどに空洞だった心が焼け野原に変化している。
ふと周囲を見渡すと近所の公園を通り掛かっていた。十数分は自殺スポットから歩いてきたようだ。
彼は昔の記憶を遡り、真っ先にブランコに座る。かなり濡れていたが既に服装は泥まみれだ。加えてその冷えた無骨な金属は今は心地良い。
あの頃は無邪気で良かった、と一丁前に過去を振り返る。だからこそ余計に憎い思い出がチラつき頭から怨念が飛び出しそうだ。それでも仕方ない事だと我慢強く耐え……
「……仕方ない?」
何が仕方ないと言うのだ。無論、奴等を許せない。全て向こうが悪い。ただ一度だってやり返す勇気も無く、反抗せず勝手に受け入れ勝手に追い詰められた。周囲よりも先に諦めたのは自分だ。世界を見限ったのは自分だった。
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