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「ふざけんな」
これは自分に向け言い放った。誰でもない己すらも欺いた気持ちを本気で軽蔑するように。そして、本当はどうしたいのか。
「お前は出来損ないだ」
ブランコの上で立ち上がり、体から零れそうな本音を全て吐き出す。
「どうしようもない駄目なやつだ!間違ってると分かってながらヘラヘラしやがって。気持ち悪い笑顔を作るなら本音で語れ!例え周りがゴミだらけでも構わず突き進め。諦めるなら今度こそ死んでやる。そんなとこで負けるんじゃねえよ。裏切られてもお前だけは裏切るな!信じてやれ!!」
肺にある空気を全て使い切った。傍から見れば近づいてはいけない不審者だが、不思議と精神は安定していた。息を切らし再び腰掛けると今更ながら寒さをより感じた。
「風邪引くわ……」
気温が冷え込み凍雨は静まった。叫び声をかき消す雨音は相殺されたのか灰の雪が降る。
俳句のはの字も知らぬ彼にとって風情など縁遠いものだ。死にたい時に精神を誤魔化す材料の一つに過ぎない。しかし、体力を消耗し疲れ切った声で文句は出なかった。
(帰ろう)
取り敢えず身近な部分から自分を信用することを始める。今は温かいシャワーを浴びたい。これは譲れない優先事項であった。
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