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この現代、一家に一台ロボットがいるなんて事は当たり前だ。各々の企業でAIの開発が進み、様々な企業があらゆるロボットを販売した。
その中で一躍人気を博したのが、感情を持ったロボットだ。人間ほど細かく激しい感情は持たないものの、一人暮らしの人に癒しを与えたり、認知症を防ぐためのコミュニケーションツールとして、爆発的な需要を得た。
老人の妻は、自分が先に死ぬ事を悟り、後に残る老人の事を心配して、スーツの男性ロボットを雇ったのだ。
しかし、ロボットとの関わり方は様々なところで問題を起こしている。少なからず感情があるため、隠し事や嘘をつくロボットも現れるようになったのだ。それを受け入れられない人にと、最近ではねこのような、感情を持たないロボットの需要も高まりつつあった。
「旦那様は、私が隠し事をしていたと知った時、裏切られた気分になったんだと思います。本当に申し訳なかった。でも……会社にはクレームを入れなかったんです。私を信頼してくださったんです」
彼はさぞ嬉しそうに語った。
「だから――私は旦那様だけに仕えたロボットとして、この務めを終わらせたいのです。此処で電源を切らずに会社に帰れば、私は記憶を消されて、また新しく派遣されることになりますから」
「お願いします」と、彼は頭を下げる。ねこはじっと黙り込んだ後、漸く言葉を絞り出した。
「……ねこは『ありがとうねこ』なので、ボタンは押せません。それは、『ぼたんねこ』がやります」
「ははっ、そうでした」
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