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「そっ、感謝状!!」
そう言って、咲がにこやかに解説してくれる。
「カード裏、右下に小さく【讃岐 たぬき】と書いていたから差出人と誤認しちゃったけど……これは差出人ではないんだよ!」
「じゃあ、いったい何なの?」
「カード本文を読むためのカギ」
「……え?」
ニヤリと咲は不敵な笑みを浮かべつつ、会話を続けていく。
「つまり、ヒントだね」
「ヒント……?」
「そっ、【当たりが砂糖】から【さ(を)ぬき た(を)ぬき】読めば、出てくるでしょ? 『ありがとう』って!」
咲が言う通り【あたりがさとう】から『さ』と『た』を抜いて読むと……確かに出てくる!!
「あああああ! 本当だ!!」
「でしょ?」
「凄い、凄い!! だけど、いったい誰が何のために」
「さあ、そこまでは分かんないけど……でも」
「でも?」
「素直に感謝を伝えることが苦手な天邪鬼なのかもしれないけど、感謝を伝えようと行動する健気さは十分評価されることだと思うけどなあ」
「……」
確かに名乗ってくれた方が何倍もうれしい。
だけど、何も感謝を伝えられないより、匿名だとしても感謝を伝えてもらえた方が絶対にうれしい。
ならば、してもらった喜びに注目すべきだろう。
カードに大きく書かれた【当たりは砂糖】の文字を見ながら、私は力強く咲に同意する。
「咲の言う通りだと思う。甘くて砂糖みたいに幸福になれる当たりであることに違いはないものね」
【Fin.】
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