好きだった女子の家に泊まった話

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高校の3年間が終わり、ぼくと江藤さんは、違う大学に進学し、どちらも一人暮らしを始めました。同じN県の大学ですが、N県は広いのです。 大学生になってからは特に連絡を取り合うことはなく、疎遠になりました。あくまで部活が同じだったクラスメートの一人にすぎなかったわけですから当然と言えば当然です。  しかし、関係に変化が起きたのはある冬の日でした。  真冬に終電に乗り遅れそうになったぼくはなんと慌てて逆方向の電車に飛び乗ってしまったのです。  意図した方向と真逆に電車が走り出した時の絶望感を皆さんは知っていますか?夏なら別に良かったのでしょうが、雪降りしきる真冬です。(豪雪地帯は雪が降っても電車は何事もないかのように普通に動きます)  すぐに次の駅で降りたのですが、そこは郊外の無人駅でした。外は見渡す限り白銀の雪景色、雪はひざくらいまで積もっていて、暗いので道路と歩道の境目すらろくにわからないという状態です。  ぼくは途方にくれました。歩いて元の駅に戻ってネットカフェでも探そうかとも思いましたが、こんなに雪が積もっていて、降り続ける雪がやむ気配は微塵もありません。何十分歩くかわかりません。途中で力尽きるかもしれないと思いました。タクシーを呼ぼうにも、終電が出た後の時間にかけるのは何とも気が引けました。駅に残ろうかとも思いましたが、雪が降るような極寒の日の無人駅では命の危険すらあります。  しばらく立ち尽くして思案を巡らせていたぼくはあることに気づきました。
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