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追いついた瞬間、腰が抜けた。
「こっ、子ども!?どうして!?」
子どもだ、女の子ども。しかも生体部品の工場で見るよりもずっと大きい。見たことがない。6歳よりもっと上の、子ども。有り得ない。どうして。
困惑するイーリャをその子どもはじっと見下ろす。
「どうしてと思う?」
「なっ、何かのはずみに、工場の水槽から逃げ出して、生き延びて、大きく、でも、そんなこと……」
「正かい。わたしは、工場にセンプク場所を持っている。それで、あなたをビコウした。弱そうだし、歌ってばっかで、不用心」
子どもは、イーリャの社員証を引っ張り、自分の顔に近づけた。
「イーリャ・エトゥ」
「はいッ」
「イーリャ、今日からあなたはわたしのシモベだ。わたしに絶対服ジュウすること。まずは家にかくまえ」
「そんなっ、ことっ」
出来るはずが──そうだ、通報しないと。我に帰りつつあるイーリャの眉間に子どもは銃口を当てた。
「さもないと殺す」
「んっ、殺したら、灯台に通知されますっ。あなたもタダでは──」
「ここ」
子どもは、イーリャの頭部と首筋の境の窪んだ箇所を指で押す。
「高圧ジュウでマヒさせた後に、ここから70度の角度でこっちのドリルを一気に差し入れる。すると、通信機能と脳の中すうを同時に壊せる。あなたも修復士なら、分かるでしょ」
「……」
「あとは、簡単。あなた達はバラしやすいようにできてる。バラして、工場の処理場、不要なパーツの山にまぎれこませる。脳は焼キャクろ。──さぁ、イーリャ、どうする」
イーリャは頭を悩ませた。断れば、此処で殺される。受け入れれば、後に殺される。だから、どのみち死ぬ──けど。気付けば首を縦に振っていた。
「よろしく、イーリャ。わたし、マツリカ」
悪魔のような子ども──マツリカは、天使のような笑顔でにっこりと微笑んだ。
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