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もの心つくかつかないかぐらいだったと思う。 大人2人に連れられて、見知らぬおじさんに引き渡された。 あの大人2人は両親だったのだろう。俺は売られた。 その時、おじさんが俺の顔をしげしげと見下ろし、見目が悪くない、と言った。後に俺の武器にしようと思った原因だ。 売られてからは、同じように売られたり引き取られたりした子供たちとの集団生活。自由はないが、ひどくはなかった。衣食住がそろって、学びも与えられたのだから。 ただ、特殊な学びだった。読み書き算術のほか、スリの仕方、玄関の鍵の開け方、見知らぬ部屋でのものの探し方など。一番役に立ったのは、人に信用される方法といった人心掌握術。 悪くない、と言われた容姿を最大限生かし、施設の中で、俺は無害ないい子として静かに、そして淡々と、ここから出る方法を探して過ごした。 俺たちは駒だ。 すぐに差し替えできる汎用部品の一つ。 スパイの子供役。
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