Thank you because you’re my...

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 絶望的な状況の中で、だんだんと意識が薄らいでいくのを感じる。どんどんと僕の身体は感覚を消し去り、僕の心は深い夢の中へと堕ちていった。  昔、まだ僕があどけない子どもだった頃、僕は医者になりたいと思っていた。そのときはまだ幼すぎて、貧富の差とか生まれの違いとかこの世の不条理など知る由もなかったけれど、なんとなくその夢を親に伝えてしまってはいけないのだと感じていたんだ。初めて僕が貧富の差を感じたのは、僕が苦労して身の丈に合ってない高校に進学したときだった。中学まではほとんど生活レベルが同じくらいの子と過ごしていたから気づかなかったけれど、高校の友だちができてからは、ああ、ほんとはこの子らとは住む世界が違うんだな、と思うようになった。中でも一番の友だちは、両親が医師で、自らも医学部を目指しているのだとあっけなく言うのだった。  僕が幼い頃に、医者を目指していたという記憶はそれから心の奥底(おくそこ)に上手にしまい込んだはずなのに。
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