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「ああ、でもよく考えてみたらこの夢の中が、その僕の心の一番の底なんだろうね。そうでしょ?」
ぼくが語りかけるとその友人はただにっこりと微笑んでいるだけだった。
今はなんの痛みもなく、流行り病のような症状も、片頭痛のようなだるさも閉塞感もない。
「ひょっとして君が治してくれたのかい?」
僕がそう呟くと、彼女はただ微笑みを続けながら軽く返事をした。
「夢の中だから当たり前のことだよ。」
ああ、確かに言われてみればそうか。でも。
「でも、君にいつものように優しくされたように感じたよ。そういえば、このマイクロウォッチも君にプレゼントでもらったんだったっけ? ありがとう。」
僕がそう言うと、彼女は微笑みというよりもおかしくって笑う仕草をしてこう言うのだった。
「あなたは私にとって、一番大切な人だもん。当たり前のことだよ。」
そう語る彼女は、夢の中だから余計かもしれないけれど、ほんとに聖女のようでますます今の薄汚れてしまった自分には近づけぬ存在に感じるのだった。
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