Thank you because you’re my...

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 風がごうと吹いている。黒くくすんだ曇天が僕を押し潰そうと企んでいる。眠っているときに僕の身体を凍えさせた冷たい雨は、ようやく温かみを帯びてきた。  こんなところに野宿するんじゃなかった。僕は昨晩適当に寝床を選んでしまったことを後悔した。その今にも崩れそうな東屋の屋根は、ところどころ穴が空いており、雨粒が集まってちょうど僕の寝そべっていたところ目がけ、滝のように流れ落ちていたのだ。これじゃあ野っぱらに寝転んでいたのと変わらないじゃないか。びしょ濡れになった身体を震わせながら、同じくびしょ濡れになったマントを絞って身体を拭く。  こんなズブ濡れになるまで目覚めなかったってことは、そうとう疲れていたのかな。もう何十キロと歩いてきただろう。ここまで来れば、クーデタを起こした反乱軍の奴らも追っては来ないだろう。ああ、三日前から世界は一変してしまった。いや、歴史の授業で習った話では、百七十年前もこの国は軍によって支配されていたらしい。  閉塞感と吐き気を覚えた僕は、いつもの片頭痛が襲ってきたのだと錯覚していた。こういう天気のときは、低気圧の影響をもろに受けてしまう体質だったから。けれどもいつもの片頭痛とは違う症状も表れている。激しい悪寒と咳、喉の痛みは、最近の流行り病に症状が似ている。腕に装着していたマイクロウォッチはバイタルサインをこう示している。 “体温:38.5℃ 脈拍:120 血圧:140/100 危険な状態です。速やかに医療機関の受診をしてください。“  医療機関と言っても、今はこの国のすべての公的な医療機関が軍部に掌握されてしまっている。闇医者か民間療法に頼るしか。でも果たしてそれに頼るのが安全かどうか。背に腹はかえられぬけれども。
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