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始まりの森
自分の手が嫌いだった。
指が短くて、爪は平たく、関節はふしくれだっていて、あまり仲のよくない今は疎遠の母親の手に瓜二つのわたしの手。
そのうえ、家事育児に追われ、手入れする暇もなくカサカサに乾燥して荒れている。
へこんだ左手薬指の跡を、親指で撫でた。
「まま!うごいて!あおだよ!」
何かに追われているように急かす、長男の声。
確かに今、意識が飛んでいた。
ごめんね、ごめんねと言いながらコンプレックスだらけの手でハンドルを握りなおす。
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