その2

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その2

M美はその日のうちに両親へそのまんまを告げた。 そして、”お父さん、お母さん、私、このままだと28歳までしか生きられないよ!何とかしないと!”と…。 そう…、それは伝えたというより、両親への切なる訴えに他ならなかった。 しかし、M美の父と母は、”それはM美の気のせいだよ”の一言で終わった。 ”お父さんもお母さんもなんで、娘の私の言うこと信じてくれないの‼” その当時のM美には、心の中でそう絶叫する他なかった。 もっとも、世間一般からしたら、いきなり中学生の子供にそんな告白をされても、”よし、わかった。まずは警察か、然るべき行政庁へ行って、あと15年で人類が絶滅してしまうのを防いで欲しいってお願いして来よう”…などと両親が答えたら、それこそ、アタマがおかしいとみられるだろう。 それは、当時のM美にも理解はできていた。 それでも、まだ10代前半の純粋な気持ちは、”そんなもんだよ、所詮。どうせ誰に言っても信じてくれない。ムダだ…”という方向にすんなり収めることはできなかったのだ。 その日以降、彼女は機会あるごとにクラスメートや親戚、塾の先生などに神様からお告げを受けたことを話してみた。 だが、案の定、彼女の言葉を本気になって耳を貸す人は皆無であった。 いうまでもなく。 それでもM美は、中学を卒業して高校に入り、新しくできた友人やボーイフレンドには、ダメ元で”そのこと”を話したりはしたが、彼女が神様と接したなどということを本気で信じる者は、やはりいなかった。 そんな経緯を繰り返しながら、年を重ねるごとに、M美自身も”もしかしたら、あれって、気のせいだったのかも…”と思うようになってきたのだ。 厳密には、無意識に自分へそう思い込ませる習慣がついてきたのかもしれないが…。 ただ、ネット上でSNSを使った発信をすれば、それなりに”信じてくれるヒト”が現れるのはわかっていた。 だが…、あえて彼女は”それ”をしなかった。 M美にはわかっていたのだ。 ”この種”の発信は、ネットの範疇に持ち込めば、かえって自分の純粋な本来の思いが本意でない別方向へ持っていかれるのを…。 そうであった。 まだ未成年の彼女にも、ネット上にあふれるギラギラな好奇心という果てない渦の餌食にされる現代社会の風潮は掌握できていたのだ。 ”もういいや。こんなこと私がどんなにみんなへ訴えたって、人類滅亡なんて、どうにもならないし‼どうせ、28歳になればわかることだし。あれが、本当に神様のお告げだったかどうかは…” ってな訳で…! 彼女が高校を卒業する頃には、すでにそんなマインドに落ち着いていたのであった。 そして、この後社会に出てOL生活を数年送すと、社内の同期社員と結婚…、M美はその3年後に男の子を出産する。 さらに時は流れ、ついに彼女が28歳を迎えた年の12月1日がやってきた…。
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