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その5
「…これで完了だな。あとは、今取り込んだこのオンナを変体させれば文字通り人類は絶滅になる…」
「相棒…、オレの意見言っていいか?」
「ああ、忌憚なく言ってくれ」
「もうしばらく、今までのニンゲン世界を観察したらどうかな?」
「と言うことは、今オンしたこのオンナを除く変体をリセットするということか?」
「ああ。気が遠くなるほどの時を費やして、姿を持てない我々ウィルスがついにニンゲンを乗っ取れたんだ。こうとなれば、奴らに代わって我々がこの地球を管理していきたい。ずっとそう思ってはきたが…」
「お前、ニンゲンの姿がこの女一人となって、この世から人間の姿をなくすのに、ためらいを感じてるんだな?」
「躊躇いなのかどうかは微妙だが、今までもっともグロテスクに見えていた人間のこの姿が、どこか美しく感じられてな」
「それ、今に始まったことじゃないな?」
「そうかもしれん…。今、我々の選んだ姿に皆が脱ぎ変わって、確信に至ったということだろう。いくら目を覆うような醜いニンゲンでも、このまま消え去るには惜しい気もしてるんだ」
「なら、一旦リセットで、元に戻すか?今なら、さほどギャップを残すことなく、これまでのニンゲン世界へはめ込むことはできる。その権限もオレとお前にあるしな」
「お前の方は、どう考えてるんだ?」
「うむ…。ニンゲンはどうしようもない生き物で、ほっとけば、この地球という星ごと、奴らは時期に滅ぶよ。だが、どうせなら突っぴょうしもない行いでこの星の全生命を振り回してきた奴らが、どんな顛末を産み落とすかってのいは興味あるな」
「要は、ニンゲンからニンゲンであることを奪う準備は整ったんだし、どうしようもない愚かな結末を本当に迎えるギリギリのところまでは見届けようってことでいいのか?」
「ふふふ…、じゃあ、我々は自分勝手でさもしい限りのニンゲン世界にとって神だな」
「そういうこと。さあ、方針が決まったんなら、この女が目覚める前にコイツ以外の全人類を元にリセットだ」
「わかった…」
かくして、青き生命の星、地球は20××年12月2日の朝を迎えた…。
***
「…ママ~、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい~。気を付けてねー」
「は~い」
”よかった…❣❣夕べ、変な夢を見たけど、結局12歳の時に聞いた声は神様じゃなかったんだし。この幸せは手放さないわ!絶対に…”
愛しい長男の集団登校を見送るM美は、何とも無垢な笑顔でを漏らしながら、そう自らの胸に言い聞かせるのであった。
ー完ー
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