思考回路の途中で佇む君に

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「もう身体は大丈夫なの?」 「うん、手術も成功したし、万全の状態」 四ツ井くんはにっこり微笑んだ。 後天性は先天性と比べ、身体の宝石がとても強い。 割れることも圧倒的に少ない。何か固いものにぶつかっても滅多に割れない。 そんなに強い後天性でも、唯一割れてしまう時がある。 その部位が強い人は割れることがないが、弱い人だとしょっちゅう割れる。 「…心配なのが、皆から弱い奴とか思われないかなーって」 その部位とは心臓、メンタルだ。 身体と心臓の部分は、別の宝石でできているらしい。新聞で読んだ気がする。 心臓が割れてしまうとバランスがとれなくなって、身体の部分もバリバリと崩れていってしまう。 だから、割れやすい人は弱いからと職場でいじめられたり、学校でいじめられたりというニュースがとても多い。 「うちのクラスは…そういうのしなさそうな人達だし、先生も優しいから平気だと思うよ」 「本当?ならよかったぁ」 ほっと息をつき、安心したような表情の四ツ井くん。 それを見て僕も、なんとなくほっとする。 四ツ井くんが、クラスの誰かとつるんでいる姿なんて見たことがない。 静かに休み時間も昼休みも本を呼んでいるので、話しかけにくい雰囲気になっていた。 実は僕もあまり会話したことない。今こうして普通に話せているのも、とても珍しい。 四ツ井くん自身も、それについて悩んでいたのかもしれない。 だから割れてしまったのではないか。 …まぁ、あくまでも僕の考えだけど。 「ねぇ四ツ井くん、話変わるんだけど、数学得意?」 「うん?まぁ、得意っちゃ得意」 「マジで?俺授業全然着いていけてないのよ、教えてくんない?」 「いいよ!何ページ?」 「えっとねー…」 こうして僕と四ツ井くんは仲良くなった。 四ツ井くんはとても素直で優しい人だった。教え方も分かりやすいし、話していてとても楽しい。 いい子とはこの子のためにある言葉かと思うくらいだった。 中二の夏の出来事。
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