青空

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「いい男じゃないか。なんで別れてしまったんだい」  斉藤をつれて竜一が帰ったあと、散らかった厨房を片付ける手伝いをしながら郷田は聞いてきました。  離婚した理由はだれにも話したことがありませんでしたし、話そうと思ったこともありませんでした。このときも月子は曖昧に「いろいろありまして……」と言うだけで話そうとはしませんでした。  郷田も気持ちを察してか聞き出そうとすることもなく「まあ、人生いろいろだからね」などと言って思いやってくれました。  健太が小学校からやってきたときには青空亭はすっかりもとに戻っていました。争った形跡は微塵も残ってなく、健太はなにも気がつきませんでした。漢字の書きとりテストの結果がよかったようで、店に来るなり鼻歌を歌いながらテスト用紙を月子に差し出して、学校であったことを楽しそうに話しだしました。月子は先ほどのこと引きずることなく、明るく笑顔で健太の話に耳を傾けたのでした。
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