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序章
このままだと私は壊れてしまうから
だから逃げてもいいよね
この街から
この世界から
『薔薇(ローズ)って解散したの?』
誰もが目に見えない闇を抱えている。
『あの抗争の後から、噂聞かなくなったね』
どれだけ綺麗事を並べるのだろう。
ただ…
こんな世界だからこそ見えることがある。
「ごめん。あたし、いっぺん死んでくる」
こうして自分を殺した
また新しく歩き出すために
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「本当にいいんですね?」
この質問は何度目やろか。
なんとも言えない表情で問いかけてくる。何度聞かれてもあたしの答えは既に決まっている。
「うん、ええよ。もう決めたから」
長い髪をバッサリと切る。ここにあたしの想いは置いていく。
床に落ちる自分の髪を見て目を閉じた。
大丈夫。あたしはやっていける。
「杏様、終わりましたよ」
目を開け鏡を見ると、鏡に映った私はよく似ている。
あたしの唯一の妹に。
「志木?なんであんたが泣いてるん? 」
「あなたが泣かないから。わたしが貴方の代わりに泣いてあげてるんです」
そう言う志木は悲しそうに笑った。
泣いてあげてるって、上からやな。
あたしもその悲しそうな笑顔に微笑み返す。
新幹線に乗るために二人で無言で駅まで行き、改札を通る。
「志木、ここでええよ」
「ホームまで見送ります」
志木は頑固やな。あたしの荷物を持ち前を歩く。この姿は今日で見納めかと思うと少し寂しかったりする。
ホームにあたしが乗る新幹線が到着した。
「ありがとう。志木に全部任せてごめん。みんなのこと宜しく」
ニコリと微笑む志木がドンドン遠くなる。
あたしは今日、この住み慣れた街を出た。
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