佇む人影

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千恵子さんも、あらなんでかしら、と首を傾げる。まぁ100均で良ければ明日にでもあたしが買ってくるけど。 誰が盗むの? 掃除してくれてるならいいけど。 今日は掃除いいわよ、と言われたので裏口に鍵をかけて、エプロンを脱ぎ荷物をまとめる。 「おつかれさん」 「はーい!また明日」 明日は夕方のみ出勤だ。 午前中の暇な時間にケーキの新作考えてみようかな? せっかくあたしにも手伝わせてくれることになったんだし、しっかりやりたいよね。 鼻歌を口ずさみルンルンと帰る。 今日こそはスーパー寄るぞ! 何にしようかな?ケーキ作る材料も買って帰ろうかな。 手当たり次第に安いものを買って、家で何を作るか考えようかな。なんて呑気に考えていた。 その時、携帯が震える。 チラッとみると志木からだ。あーどうしよ?朝話したし、今は話す気分じゃないんやけど。色々な感情が混ざり合ってて今は電話を取りたくなった。 でも電話に出ないと、志木が心配しすぎて、やばそうだから出るだけ出よう。 「どうしたん?」 『杏!!時間いいですか?』 切羽詰まった志木の声。 志木があたしを杏と呼び捨てにする時。 それは…… 「何?はよ」 本気で怒ったり、何がやばい状況やったり喧嘩したりする時だけや。 それで聞こえた言葉で気絶しそうになった。 『スコーピオンが目撃されてました。杏の住む街の近くに…』 ありえへんやろ? その名前を聞くとは思わへんやん。 なんで関東に?なんで復活してるん? 心臓の音がうるさい 心も頭の中もぐちゃぐちゃにされた気分。 『杏!?大丈夫ですか?』 「ごめん、志木…大丈夫。大丈夫」 大丈夫なんかな?大丈夫ちゃうよな。 おかしいな。また目の前が白くなる。志木が必死に続けて何か言ってるけど何も聞こえへん。 スコーピオンか 怖いね。 復讐?そんな簡単な言葉で片付けれへん。 「今度こそ、」 杏!!!志木の大きな声が聞こえたが携帯を電源ごと切る。 スコーピオンが?なんで? いまは、何でとかそんなんどうでもいいか。 あの赤髪の…… あのニヤついた顔しよる、きしょい男を 今度こそあたしの手で潰す。 あたしの男を 次こそ必ず……! -------
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