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「状況わからんけど、困ってるん?」
たまたまそこに居合わせた女は、逃げずにまだそこにいる。
……血が出すぎて頭が動かない。
座り込んでいた時に足が見えたのか、青紫色に腫れ上がった足を見て「やば」そうポツリと女は呟いた。
バタバタと足音が近づいてくる。
はぁ
携帯をどこにやったんだろうか。
せめて連絡さえできればなんとかなったかもしれないが、今回は諦めるか?
相手は何人いたかな。
こんなボロボロで勝てるか?立てれば勝てるが血が…たりねぇ。
拳に力を入れる。
誰か分からないが、ここに居ればこの女も巻き込まれる可能性がある。
守ってやる気力もない。
だからさっさと何処かへ行って欲しいのに、どんどんあいつらの声が聞こえてくる。
すると、グルグル回る視界で女が動いた。
「誰か知らんけど、あんた、貸し1つやで」
は?
グルグル回る視界がその瞬間に晴れた。
俺と同じ色の髪をしたその女は、少し呆れたように笑い俺に近づく。
「動きなや」
聞きなれない関西弁を話すその女は俺の前に膝をついて、俺の頭を覆い尽くすように、ふわりと抱きしめた。
な…何してんだ?
あいつらが来る。
でも体は動かなかった。
バタバタ
『いたぞ!!!』
見つかった。
女を押し返そうとするが、ビクともしない。
あれ?なんでだ?俺がいま、力が出ないだけ?
足音は近づいてきたが、俺たちよりもかなり手前で止まる。
『金髪の女じゃねーかよ』
『こんな所でイチャイチャすんなよ』
『まぎらわしい!』
あっちだ、いくぞと言い、足音はこの場から去って行った。
……助かった??
「こんなんで引っかかるんやな!一か八かやったけど成功してよかった」
そう怖がるそぶりもなくニコニコ笑う女に少しドキっとした。なんなんだ?
ありがとう
そう告げようとしたとき、目の前の女は大きな声を出す。
「あーーーー!やば!お気に入りの服にあんたの血ついたやん!早よ洗わな」
……そりゃすまなかった。
かっこわりぃ。
クリーニング代でも出せたらよかったけど、財布も携帯も、あいにく鞄の中。
「携帯貸してくれ。その服もなんとかしてやるから」
あいつら、そろそろ俺のこと探し出すはずなんだけどな…
せめてあと少し意識を保てれば…
そう思ったがどんどん目の前が暗くなる。
「は?また倒れんの?ちょ、待って!救急車??」
女の声が最後に聞こえた。
救急車は…やめてくれ。
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