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「いつの話してんのよ。それに、あんたが振ったんでしょ」
「……そうだったそうだった」
いつもの純平に戻った。
あの頃は……純平が居なきゃ生きていけなかったな。優しく包み込んでくれる温かさも、愛も、拒否したのはあたしだけど。
「あんた、明日入学式じゃないの?」
「うーん」
「未来の教師が呑んだくれなんて最悪ね!」
仕方がない
飲まなきゃ未来もないんだから。
限界まで飲んで気絶するように眠る。
そうしなきゃ次の日なんて訪れないから。
「薬は?飲んだ?」
「……どうだったかな」
ため息をついてあたしの座る前に、腰に手を当てて立つ。
「芽郁、お前がそんなんだから、いつまで経っても心配で仕方がない」
純平の話し方になる。
別に心配されたいわけじゃないけど。でも、ここに飲みに来るということは、そういうことか。
「俺はもう純平じゃない。今は好きな男もいる。マリアだ。でも、お前が居ると、俺は純平に戻ってしまう」
「……ダメなの?」
「ダメだよ。純平は捨てたから」
「そう。じゃあお店来ない方がいいの?」
そういうこと言ってんじゃないだろ。純平は少し大きな声を出した。
店はもうとうに閉まっている。ここにいるのはあたしと純平だけ。
迷惑だね
「あたしの人生で大事な人って、純平くらいなんだもん。いつ死ぬか分からないんだから、大事な人のそばに居たいじゃない?」
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