記憶をたどれ!

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 雪が降っている。  恐ろしく寒い。  リカは雪の上で倒れていた。  とりあえず、身体を起こす。  「いつもの公園だ」  しばらく、ぼうっとしつつ、アヤが来るのを待つ。  「寒い……寒すぎる」  とにかく寒い。  しかし、歯を鳴らしながら寒さに耐えるしかない。  「もうダメだ……萎えそうだ……。もう迷わない、負けないって決めたのに。そう、私はずっとひとりで戦ってる。いつまでも戦えるか……」  「……あの……大丈夫ですか?」  気がつくと、震えるリカを心配そうに見ているアヤがいた。  アヤはマフラーに手袋、コートと防寒対策しっかりした服装をしていた。  「あ……アヤ……」  「……? 私を知っているの?」  ……ああ、またこの会話か。  リカはうんざりしながら、最初から説明をする。今回はアヤに血を流させないとならない。  それが目標だ。  ワールドシステムを出現させるためにどうすればいいのか、まだわかっていないのだ。矛はないが、ワールドシステムの開き方がわかれば、なんとかなりそうだ。  ……どうやって怪我をさせる?  リカは優しいアヤに攻撃をすることはできなかった。  だから迷っている。  「もう一度、あの吹雪は起こるか……確かめてみて……考える」  「……あの……リカ?」  アヤは不安そうにリカを見ていた。  「あ、いや、なんでもないよ。商店街の方に連れていってくれる?」  「え……ええ」  アヤは戸惑いながら、リカを連れて歩きだした。  「寒いわよね? マフラーと手袋……貸してあげるわ。とりあえず、私の家であたたまりましょう? 商店街を抜けた先だから」  「……ありがとう……」  リカはアヤの優しさに涙してしまった。アヤは本当に優しい。  今もずっとリカを気にかけている。  「泣かないで……リカ」  「うん……思い出してはくれないよね?」  「……?」  リカの言葉にアヤは首を傾げた。  「ごめんね。なんでもないんだ」  「そう……」  今回、アヤの様子が何か変だった。何かを考えている。  今までの記憶が流れ、時間がおかしくなり、頭痛が襲い、商店街に入ってプラズマと栄次に出会った。吹雪は起きない。  「うう……どうしたら……」  「おい、この娘はなぜ、辛そうなんだ? 寒いからか?」  栄次が優しく声をかけてくる。  「震えてんじゃねーか。俺の上着だけど……着る?」  プラズマが上着を脱いでリカに渡してきた。プラズマは下に薄手のシャツを着ていた。  「……プラズマさんが寒くなってしまいますよ……。私は……平気ですから」  リカは上着を持ちながら、どうしようか迷っていた。  「……娘……リカだったか? 身体を冷やしてはいかぬ。着るのだ」  栄次が再び声をかけ、リカは渋々上着を着させてもらった。  暖かい。  心まで暖かくなる。  ふと、プラズマの腰に銃がぶら下がっているのを見つけた。  「あ、これ? あぶねーよ? 未来の銃で俺の霊的武器だ。栄次は刀なんだ。神は何かしらの霊的なものを持ってる」  「霊的なもの……」  プラズマの発言で、メグが言っていた事を思い出す。  メグが持っていた矛も「メグの霊的武器」だった。  神なら何かしらの霊的なものを持っている……。  「じゃあ、私は何を持っていますか? 私は時神なんです」  プラズマにリカは尋ねてみた。  「いやあ……わからねぇ。出してみたら?」  「出す? どうやるんですか?」  「右手か左手に意識を集中させる。慣れてくれば俺達みたいにずっと出していられるぜ。ちなみにもうひとつの霊的武器は弓だ」  プラズマが右手をかざすと、装飾されていないシンプルな弓が現れた。  「ほれ。デカイから普段は消してるんだ」  プラズマが手を離すと、弓はホログラムのように消えていった。  「……すごい……私も……」  プラズマの言った通りに手に集中してみた。頭に小型のナイフのようなものが浮かんだと思ったら、右手が何かを握っていた。  「ふーん、あんたはナイフか。今時だなあ。宝石みたいにきれいじゃねーか」  プラズマが装飾されたキレイなナイフを興味深そうに眺め始めた。金色の赤い宝石が散りばめられた美しいナイフだった。  小刀かもしれないが。  そんなことよりも、リカは手にナイフを持っていることが恐ろしかった。  ……アヤに傷をつけられる……。  そう思ってしまったからだ。  「アヤの血で……ワールドシステムが開くかもしれない。私が泣かないで……血だけで……」  ……どうせ、誰も覚えていないんだ。今回だって、どうせ忘れる。  「はあ……はあ……」  リカは震えながらナイフをアヤに向けると、飛びかかった。
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