記憶をたどれ!

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 「はいはーい? ああ、アヤ! 最近忙しくて全然遊べてないじゃないかい! スキーでもいくかい?」  楽しそうで陽気なサキの声が響く。愛嬌のある瞳がアヤを見据えていた。  「サキ、その話は後でしましょう。それより、最近、高天原が騒がしくないかしら? 高天原は何をしているわけ?」  「え? ああ……騒がしいのは西と東かなあ。あいつらは伍の世界を知っているからねぇ。あたしらには動かないよう伝えてきたところだよ。余計なことをされたくないんじゃないかね。あたしら、消滅の危機だしさ」  サキは雰囲気変えずに淡々と語った。  「サキ、あなたはどこまでこの話を知っているの?」  「全然、知らないけど……ワイズは『K』じゃないかい。この世界内の異常、もしくは『壱のバックアップ世界陸(ろく)』の世界の話ならあたしも動くけど、今回は分野じゃないからねぇ……」  「ちょっと待って……、ワイズは『K』なの? 世界を平和に保たせるデータの?」  アヤは険しい顔で陽気なサキを眺める。  「そうみたいだねぇ。しっぽを出さないから確信はないんだけどね。神の神格を持ちながら『K』のデータを持ってるはずだよ。『K』は伍の世界の『平和』も守っているから、絶対色々なことを知ってるはずだけど、頭のいい神だから、情報が手に入らないんだ」  「そう……ワイズが鍵。タケミカヅチ……西のトップはどうなの? 動いているみたいだけれど」  アヤは、リカをよく襲っていたらしいタケミカヅチについて聞いてみた。  「あー……剣王は壱と伍が『繋がっていた』時期を唯一知っている神だからね。あたしらは辻褄合わせで記憶を消去されているけれど、あいつだけは記憶を持ってる……。調べた結果、壱と伍は昔繋がっていたらしいんだ。信仰がある世界とない世界が繋がっていたとはなんなんだろうねぇ……。現在調べ中だよ。で、剣王は伍から入ってきた害悪のデータを消滅させようとしてるみたいだね。なんだか知らんけど」  アヤはそれがリカであることに気がついたが、表情には出さず、流した。  「ありがとう、サキ」  「待っておくれ。時間が狂っているのかい? この世界にいないはずの時神がいないかい? 過去の世界、参(さん)の世界の栄次、未来の世界、肆(よん)の世界のプラズマ……それと……」  サキはなかなか鋭く、観察眼もある。ビデオ通話に映っていた他の時神に気がついてしまった。  「サキ、このことは高天原に持っていってはダメよ。私達も隠れて動いているの」  「わけありかい……。手を貸そうか?」  「今はいいわ。また、電話する」  「わかったよ」  サキはアヤに軽く微笑むと、そう返してきた。アヤは「じゃあね、ありがとう」と言うと、電話を切った。  「どうかしら?」  アヤは冷や汗をかきながら栄次とプラズマを仰いだ。  「良かったんじゃね? 予想以上の収穫だ。剣王とワイズが鍵か。あいつらの過去、過去見で見られねーかな。繋がっていた世界の謎がわかるかも」  プラズマはちらりと栄次を横目にみた。  「厳しいな……。神格が高すぎる」  栄次はリカを抱きながら、つぶやき、眉を寄せた。  「ま、だよな」  「栄次さん……私、大丈夫なんですが……」  恐る恐る声を上げるリカにプラズマが笑いかけた。  「あんた、栄次に甘えとけよ。これでいーの。あ、それとも俺が抱っこしようか? あんた、安心しすぎて膝がガクガクしてんだろ。そんなんじゃ歩けねーよ。俺も力はあるから、あんたを抱えるくらいなんてことないぞ」  「な、なんか恥ずかしくて……周りの目が……」  ここは商店街の真ん中。人々はサムライが女の子を抱いているのを眺めながら、映画の撮影かと不思議そうに通りすぎていく。  「目立ちすぎてるわね……。とりあえず、私の家に……」  アヤは顔を赤くしつつ、歩き出す。アヤが歩き出すと、栄次とプラズマもついてきた。  しかし、栄次がすぐに異変に気がつき、止まった。  「栄次?」  「殺気っ……」  栄次はリカをプラズマに渡すと、刀を抜いた。  プラズマはリカを受け取ると、空を睨み付けた。雪が降ってきている中、透明なドーム状の何かが、電子数字を撒き散らしながら時神達の周りを囲った。  「強力な結界を張られた!」  プラズマはリカを抱きながら、霊的武器銃を取り出し、構える。  ふと、タケミカヅチ、剣王がリカを狙い剣を振りかぶってきていた。  「剣王!」  プラズマが決死で剣を避け、栄次が刀で剣王の剣を受け止める。  「うっ……ぐっ!」  「なんで君達が邪魔するのかな~? 困るよ~。結界は張ったから人間や物には危害は加わらないがね」  剣王は軽々栄次の刀を片手で受け止め、ヘラヘラと笑いながら、栄次を蹴り飛ばした。  栄次は遠くに飛ばされたが受け身を取り、無事だった。  「剣王には勝てる気がせんが……やるだけ……やろう」  栄次は剣王を退けるべく、刀を正眼に構え、攻撃を仕掛け始める。  「栄次さん……」  リカが戸惑いながら栄次を見つめていたので、プラズマはリカを安心させようとしていた。  「リカ、栄次はなんだかんだで平気なんだが、逃げる方面を考えた方が良さそうだ。俺がいるから安心しろよ。なんて、かっこいいセリフ吐いてみる」  剣王は栄次の攻撃を避けつつ、プラズマに襲いかかってきた。  「やっぱり、そうなるよな」  プラズマはリカを抱いたまま、剣王から紙一重で逃げる。  「あっぶねっ!」  プラズマが避けた直後、栄次が刀で剣王を鋭く凪払ったが、剣王は身を翻し、華麗に避けた。  「遊んでる場合じゃないんだよ~、君達を攻撃できないのわかるよね? その少女を渡してくんないかな~?」  剣王はあきれた顔のまま、しつこくリカを追い回す。  プラズマは常に危なげに避け、栄次が剣王を遠ざけるというのを繰り返すが、戦いは進展しない。  「仕方ない……やるわ」  アヤが冷や汗をかきながら、時計と五芒星が合わさったような陣を出し、手を前にかざす。  不思議な鎖がアヤの手から飛び出し、プラズマと栄次に巻き付いた。  「手足の時間を早めたわ! 早く走れる! 逃げるわよ!」  「お! アヤの時間操作! 栄次! 行けるときに走れ! 俺は先に行く!」  プラズマはアヤも危なげに抱えると、走り出した。  栄次は剣王の隙をついて逃げ、プラズマを追って行く。  「結界を破れば出れるよな。走りながらパスワードをといてやるぜ」  「プラズマ、『65543281』だ。それから『紅葉の錦、神のまにまに』だ」  横を走る栄次がプラズマにつぶやき、プラズマは肩を落とした。  「ああ、あんた、過去見してパスワードを見たのか」  「ああ」  結界は栄次により、解けて、商店街の賑わいや、人々が見えるようになった。  「それで、どこに逃げるの? 剣王はしつこいわよ」  アヤが後ろを気にしつつ、尋ねる。  「どこへ逃げても同じそうだが……アヤ、あんた『K』とかいうやつの友達がいるんだよな? そいつ、かくまってくれねーかな? な、仲間だよね? まず……」  プラズマは冷や汗を流しながらアヤを見た。アヤはプラズマに抱えられながら軽く頷く。  「サヨは私の友達よ。ただ、彼女はワイズと同じ『K』だから、リカを排除する方面かもしれない……」  「『K』とやらが関わってくるなら、情報を集めていくしかねーし、リカを遠ざけて、その『K』に話をしにいくか。えーと……サキだっけ? その子」  プラズマははにかみつつ、アヤを見据えた。  「サヨよ。サキは太陽神の方でしょ」  「そ、そっか。ややこしい……」  プラズマは再び、苦笑いをすると、アヤにサヨとやらの居場所を聞いた。  「その子、どこにいんの?」  「案内するから、そのまま走って」  「おう!」  プラズマがとりあえず走っていると、栄次が刀を鞘にしまう音が響いた。  「まいたようだ。もう気配を感じない……。回り込まれる可能性もあるが、今は近くにいない」  栄次が歩みを止めたので、プラズマも立ち止まり、アヤを下ろした。  「プラズマ、ごめんなさい。重かったでしょう……ありがとう」  「大丈夫だ。問題ねーよ。ただ、ちょっと疲れちゃった」  プラズマはリカを栄次に抱えさせた。  「ほんと、ごめんなさい。プラズマさん、栄次さん……」  リカは蒼白のまま、栄次とプラズマに頭を下げる。  「よい。このまま、進むぞ」  気がつくと商店街を抜けて、住宅街へ出ていた。             
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