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「ひとみちゃん、ごめんだけど……」
言葉に詰まってしまうぐらい、少女のまなざしがどんどん強くなっていく。視線をそらそうとすると、普段は見ることができない胸元が目にとまった。いつも少女だと思って接しているけど、来年二十歳の彼女の身体は艶っぽさがあって、心の中がざわざわとする。
「貴明さん……」
もう一度名前を呼ばれて、耐え切れず僕は彼女のことを抱きしめていた。
理性が本能を上回ろうとした瞬間、エレベーターが静かに止まった。
「……なんてね」
「えっ」
現実に一気に引き戻された僕は、腕の中から少女を開放した。彼女の顔があまりよく見えないけど、繋いだ手のぬくもりは、さっきよりすごくあたたかい。
「ひとみちゃん。今はまだ、そのままでいいよ。そのままのきみがすごくかわいいから」
「でも……」
「もう少しだけ、待ってくれないかな。今夜は、まだ少女のままでいい」
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