村井 貴明(むらい たかあき) 38歳

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「ひとみちゃん、ごめんだけど……」  言葉に詰まってしまうぐらい、少女のまなざしがどんどん強くなっていく。視線をそらそうとすると、普段は見ることができない胸元が目にとまった。いつも少女だと思って接しているけど、来年二十歳の彼女の身体は艶っぽさがあって、心の中がざわざわとする。 「貴明さん……」  もう一度名前を呼ばれて、耐え切れず僕は彼女のことを抱きしめていた。  理性が本能を上回ろうとした瞬間、エレベーターが静かに止まった。 「……なんてね」 「えっ」  現実に一気に引き戻された僕は、腕の中から少女を開放した。彼女の顔があまりよく見えないけど、繋いだ手のぬくもりは、さっきよりすごくあたたかい。 「ひとみちゃん。今はまだ、そのままでいいよ。そのままのきみがすごくかわいいから」 「でも……」 「もう少しだけ、待ってくれないかな。今夜は、まだ少女のままでいい」
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