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王の死
領土問題に端を発するハルスタール王国とトルバーン王国の戦いは、ハルスタール優勢で終わりを迎えようとしていた。
戦いの始まりは、トルバーン王国が、ハルスタール領内のヘインズ平原の領有権を主張したことにある。
ヘインズ平原は、記録に残る限り少なくとも百年はハルスタール王国の民が暮らしていた場所だ。緑多き平原を多く擁するハルスタールとは対照的に、国土のほとんどが山岳地帯であるトルバーンの民が、一方的に豊かな穀倉地帯を欲したのは明白である。当然のことながら、ハルスタールとしては認めるわけにはいかない。
国力で上回っていたハルスタールが敗北する要素はなかった。
夜襲に遭うまでは。
広大なヘインズ平原の中でも、ハルスタール王国とトルバーン王国の国境にほど近い川べりで、それは起きた。何の前触れもなく突如、鬨の声が上がり、火矢が飛んできたのだ。
ここでハルスタール軍が休息をとっていることなど、トルバーン軍が知るはずもなかったのだが。二十二歳の若き騎士フィン・ウィスカの胸に一抹の不安がよぎる。しかし、今は原因を考えている場合ではない。敵も味方もわからない宵闇の中、松明の明かりだけで状況を把握し、隣にいるシェイマス王を守り抜かなければならない。
今年で四十三歳となるシェイマス王は、巨大な剣をふりかざし、自ら道を切り開いていく。その勇猛果敢な姿に奮い立つ騎士もいるが、フィンは寒気を覚えた。
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