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「貴女に止められるとは、思っていませんでした」
「私を誰だと心得る。シェイマス・ハルスタール国王陛下に命を捧げし黒花の魔女……今も私の主は変わらぬ」
「ならば、その主をお守りできなかった私は、貴女にとって罪人のはずではありませんか」
何故、あの矢に射られたのが自分ではなかったのか。何故、守れなかったのか。何度も何度も考えた。
ディアーナはフィンの手からペンダントをひったくり、杖をつきつける。飄々としているのが常の彼女は今、明らかに怒りをあらわにしていた。
「陛下のお傍についていながらなんというざまだとか、一方、お前は魔術に理解があるから、生きていてくれたほうが都合が良いだとか。私のお前に対する思いは種々様々あるが、この際、それらはどうでも良い。私の主は陛下お一人。そして、私の使命は、陛下の願いを叶えることだ」
「陛下の、願い?」
「そんなこともわからんのか、馬鹿者が」
樫の杖がまたしてもフィンの頭を殴った。鈍い痛みが、フィンをこの世に押し止めようとしている。
「二十年以上も世話になっておきながら、貴様は陛下の何を見ておった? 陛下がどれだけの思いで貴様に目をかけ、ここまでお育てになったか、本当にわからんとでも言うつもりか!」
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