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メイド喫茶なんてやってられるか
「ごっ…ご主人様お待たせ致しました」
そう言って私はテーブルの上にオムライスを置いた。
そう。何とも長い名前の。
「こっこちら『ふわふわ金色ハートたっぷりオムライス』です。」
これを噛まずに言えるようになるまで一週間かかった。
そして…
「もっ…もえもえきゅ…ん…」
あぁ。多分今私の笑顔はとてつもなく引きつっているのだろう。
お客さんの視線がイタい…いや、キモい。
お盆を持って調理室(魔法の部屋と呼ばないと怒られる)の方へ下がろうとするとコソコソと聞こえてくるのだ。
「あのような恥ずかしがってる系も可愛いでござるな」
「萌えますなー」
これがイケメンだったら嬉しがるであろう。
ただ、そこに居るのは太った常連客と鼻の下を伸ばしたおっさん。
「はぁ。」
おっさんはおっさんでもイケおじとかなら大歓迎なのに…
そう思ったのも束の間、レジ番交代の時間になってしまった。
あー嫌だ。レジ番だと帰っていく客に『また帰って来て下さいねご主人様』と言わなくてはならないのだ。
あぁ、考えるだけで目眩が…
「3500円でございます、ご主人様☆また帰って来て下さいね☆」
先輩の背中を見ながら虚しい気持ちに駆られる。
そんな時…
カランカラン…
「いらっしゃいませご主人様☆」
「いらっしゃいませー」
もちろんご主人様をつけない後者が私だ。
どうせまた気持ち悪い客だろ、
そう思ってそちらの方は向かずにただレジだけを見つめていた。
「やぁ。久しぶり。」
先輩メイドにそう挨拶する声は見るからに常連。
しかし、非常に声が良かった為に私はそちらを向いてしまった。
「やっと顔合わせてくれた。」
そう言った彼を見て私は危うく悲鳴をあげるところだった。
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