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白いシャツを着て笑うと目が細くなるあの人を私は知らない。
なのにどうして、鮮やかに、色鮮やかに。
目を瞑ると、彼の首にある黒子の位置や、エクボさえ思い出せるほどに何度も夢を見た。
ある日短く髪を刈った彼が、ベージュの隊服に身を包み敬礼をした。
その姿に意味を知り、泣き崩れた私を。
『ボクは君を守りたい、だから』
だから行くんだよ、と。
泣きながら微笑むあの人に、嫌だと駄々をこねて止まらない私の涙。
交わした小指の約束は遠い遠い未来に想いを馳せた。
――いつか、
さよならの口づけを交わしてすぐに我に返ったのは。
耳をつんざくようなサイレンの音。
見上げた空に飛んでいた何基もの飛行機。
バラバラと落下してくる銀色の筒。
恐怖で動けなくなった私を、大丈夫だよ、と抱きしめてくれた。
私たち、あれから一体どうなったんでしょうか?
ねえ、百年桜。
あなたは知っているの?
あれは誰?
あれは私?
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