限りなく青に近い空の下で

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 あの日、彼女に嘘をついた日、私は彼女に、全てのことを打ち明けるつもりだった。  世界で起こっていること、嘘をつかなくちゃいけなかった理由を。  雨が降り初めたあの日の朝、街の交差点の上で、学校に向かう彼女とすれ違う。  彼女と別れて1億年後の世界、——地球という星の地上で、私たちは秒速1メートル圏内の距離にいた。  彼女は私のことには気づかなかった。  「私」が誰で、何をしようとしているか。  当然だ。  彼女は、私の存在など知る由もない。  それは何百年も前から決まっていたことだ。  何百年も、何千年も前から。  それは世界の「確定事項」だった。  私たちは元々、この星の地上に生まれてはいなかった。  違う星、違う時空。  解釈をすれば、いろんな表現も許されるほどに隔絶した地平線上の果て。  そんな遠すぎる次元の狭間に、私たちはいたんだ。  宇宙に飛び立つ、あの日までは。  灰色に染まる空の下で、降りしきる雨水が前髪を伝って地面に落ちる。  交錯する視線の横で、彼女は次の瞬間に何が起きるか、わからないようだった。  「こんにちは」  聞こえるはずもないその声色の先端に触れるように、彼女はこっちを見た。  届いた音の先で、目と目が合う。  …誰?  すれ違い際の私を見て、そんなことを聞けるゆとりもなく、まるでビデオの静止ボタンを押したかのように彼女が立ち止まる。  交差点の真ん中で、重なり合う2人の影。
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