出席

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出席

 同窓会の会場は東京から新幹線でおよそ2時間の地方都市。日当は後払い。交通費が心配だと伝えると、上乗せして支払うから立て替えてくれと言われた。  また、子供時代の依頼主は非常に地味で誰もまともに顔を覚えていないだろうから、凝った変装をする必要は無いとも言われた。その代わり、会場に着いたら「A町のT田S夫」とできるだけ大きな声で名乗るように指示された。  同窓会当日、俺は電車の乗り換えでミスをやらかした。新幹線に乗るところまではよかった。だが会場最寄り駅に向かうための在来線を拾うのに失敗した。まさか休日の昼間とはいえ、2時間に一本しか電車が走っていないとは思わなかった。  俺は電車を降りるやいなや駆け出した。  会場は駅前のホテル。駅もホテルも外観が妙に新しい。つい最近までこの辺りには目立った施設は何もなかったことをうかがわせる。  間一髪、開始時間ぎりぎりに会場へ飛び込めた。 「こんにちは。お名前をおうかがいしてよろしいですか」  受付の女がにこやかに言う。俺はどうにか呼吸を整えながら、依頼主の指示通り名乗った。 「A町のT田S夫です」  女の顔から笑顔が消えた。それだけではない。俺が名乗った途端、歓談に興じていた奴らも会話をやめ、会場はしんと静まり返った。
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