1.奇妙な儲け話

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1.奇妙な儲け話

 勤め先が経営不振に陥り、職を失った俺は、見事に食い詰めていた。生活のためには仕事を選んでいられない。どんな職場でも働かなくては。その考えが実に甘ったれたものか、俺は職安で嫌というほど思い知らされた。求職者が仕事を選んでいなくても、会社側は人間を選べる。どんな仕事でもやり遂げます、と言ったところで、会社に対してはなんのアピールにもならないのだ。要するに、若くもなく難関資格を持っているわけでもない俺を選んでくれる会社は無かった。  収入が無くなると恐ろしく判断力が落ちる。俺はSNSで「裏バイト」「楽々稼げる」「臨時収入の救世主」等と謳うアカウントを片っ端からフォローした。それらから紹介される仕事は大概詐欺まがいかネズミ講がほとんどだった。それでも俺は諦めず、いつかはまともな仕事にありつけないかと根拠のない希望を抱き続けていた。 「急募 同窓会出席代行 日当5万 詳細はDMで」    スマートフォンをいじる指がピタリと止まった。  同窓会出席代行? 誰かの代わりに同窓会に出て、飲み食いするだけで5万円もらえるのか? そんなうまい話が、と疑うより先に俺の指はダイレクトメール送信ボタンをタップしていた。
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