0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
灰色の雲から水が滴る中、人けの全く無い道を小走りで進むフードを被った少女の姿が一つあった。
少女はやがて少し大きな建物にたどり着くと、小さな戸から中へ入っていった。
建物の中に入ると、入ってすぐの所にいた男いた。
男は女の姿を見ると、慌てて椅子から立ち上がり、直立不動の姿勢を取った。
少女は男の様子を薄く笑いながら、男の手元にある蝋燭に手を当てる。
すると、蝋燭に蒼白い炎が小さく灯った。
それを見た男は、まるで王に仕える従士のように頭を深く下げた。
少女はそれを無視しながら男の横を通り過ぎ、ゆっくりと階段を上がった。
そして二階にある複数の扉の一つの前で止まると、丸い取っ手をゆっくり掴み、
「こんばんはー!!」
と、少し大きな声で挨拶をしながら中へ入った。
部屋の中には、男のようにも、女のようにも見える少年のような青年が、呆けた顔で持っていた書類を落としながらこちらを見ていた。
「よしっ!」
少女は大きく拳を握り締めてガッツポーズを取りながら、扉を閉めて部屋の中にあった革製の長椅子の上に寝そべった。
「えっ、あっ、えっ?」
何が起きたのかわからないと慌てる少年に向かって、少女は笑いながら口を開く。
「いっつも連絡してから来てるさぁ、連絡なしに来たらどうなのかなって思ってさぁ......どうだった?」
ヘラヘラ笑う少女にため息を吐きながら、少年は落とした書類を拾い上げつつ答えた。
「驚かせないでよリティ....」
「ヤだね、絶対またやる」
「もう......」
呆れながらも少年は優しい笑みを浮かべる。
「ルドルのとこにいたんじゃなかったの?」
「いたんだけどさ~。ちょっと遊び過ぎちゃってさ?皆が血眼になって探し始めたから逃げてきた。いや~世の中怖いよね~」
「今度は誰を殺ったの?」
「ん~....四級四人に、五級が六人くらいかな~」
「.....やり過ぎだよ」
「そうかな~?」
「だってルドルの所に行ってまだ二週間しか経ってないんだよ?いくら何でも短期間で殺り過ぎだよ」
「まぁまぁ、気にしなーい気にしなーい」
力の抜ける声を出しながら、リティは懐から焼き菓子―クッキー―を取り出して頬張る。
「...はぁー......」
少年は再びため息を吐きながら、書類を整理しつつ尋ねる。
「それで.....これからどうするの?」
「こっちで遊ぶ予定」
「そう.....仕事の邪魔はしないでよ?」
「わかってるって。大人しくしてるよ」
(.....嘘だ.......)
少年は内心で小さく悪態をつきながら、親が子どもをしつけるように優しく言った。
「もう少しで終わるのでちょっと待ってて」
「レント君、あーん」
リティはレントの言うことを無視して、口を開けるようクッキー片手に要求する。
「人の話聞いてよ.....」
レントの小さな嘆きが部屋に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!