リビングキラー

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灰色の雲から水が滴る中、人けの全く無い道を小走りで進むフードを被った少女の姿が一つあった。 少女はやがて少し大きな建物にたどり着くと、小さな戸から中へ入っていった。 建物の中に入ると、入ってすぐの所にいた男いた。 男は女の姿を見ると、慌てて椅子から立ち上がり、直立不動の姿勢を取った。 少女は男の様子を薄く笑いながら、男の手元にある蝋燭に手を当てる。 すると、蝋燭に蒼白い炎が小さく灯った。 それを見た男は、まるで王に仕える従士のように頭を深く下げた。 少女はそれを無視しながら男の横を通り過ぎ、ゆっくりと階段を上がった。 そして二階にある複数の扉の一つの前で止まると、丸い取っ手をゆっくり掴み、 「こんばんはー!!」 と、少し大きな声で挨拶をしながら中へ入った。 部屋の中には、男のようにも、女のようにも見える少年のような青年が、呆けた顔で持っていた書類を落としながらこちらを見ていた。 「よしっ!」 少女は大きく拳を握り締めてガッツポーズを取りながら、扉を閉めて部屋の中にあった革製の長椅子の上に寝そべった。 「えっ、あっ、えっ?」 何が起きたのかわからないと慌てる少年に向かって、少女は笑いながら口を開く。 「いっつも連絡してから来てるさぁ、連絡なしに来たらどうなのかなって思ってさぁ......どうだった?」 ヘラヘラ笑う少女にため息を吐きながら、少年は落とした書類を拾い上げつつ答えた。 「驚かせないでよリティ....」 「ヤだね、絶対またやる」 「もう......」 呆れながらも少年は優しい笑みを浮かべる。 「ルドルのとこにいたんじゃなかったの?」 「いたんだけどさ~。ちょっと遊び過ぎちゃってさ?皆が血眼になって探し始めたから逃げてきた。いや~世の中怖いよね~」 「今度は誰を殺ったの?」 「ん~....四級四人に、五級が六人くらいかな~」 「.....やり過ぎだよ」 「そうかな~?」 「だってルドルの所に行ってまだ二週間しか経ってないんだよ?いくら何でも短期間で殺り過ぎだよ」 「まぁまぁ、気にしなーい気にしなーい」 力の抜ける声を出しながら、リティは懐から焼き菓子―クッキー―を取り出して頬張る。 「...はぁー......」 少年は再びため息を吐きながら、書類を整理しつつ尋ねる。 「それで.....これからどうするの?」 「こっちで遊ぶ予定」 「そう.....仕事の邪魔はしないでよ?」 「わかってるって。大人しくしてるよ」 (.....嘘だ.......) 少年は内心で小さく悪態をつきながら、親が子どもをしつけるように優しく言った。 「もう少しで終わるのでちょっと待ってて」 「レント君、あーん」 リティはレントの言うことを無視して、口を開けるようクッキー片手に要求する。 「人の話聞いてよ.....」 レントの小さな嘆きが部屋に響いた。
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