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この期に及んでずるいと思うが、さすがに"嫌い"
とは言えなかった。
ただ嘘をついてたことに変わりはない。
彼女の反応が怖くて頭を上げられなかった。
「だったらどうして毎日食べに来たの?」
ドクンッと心臓が脈うつ。
そう疑問に思うのは当然だ。
何でわざわざ嫌いな物を毎日のように食べに来たん
だって。
誰だって不思議に思うはずだ。
口の中がカラカラになったような気がするのは
きっとチョコのせいだけじゃない。
「それは.....君に会いたかったから。」
我ながらクソ情けない告白だと思った。
声が震えないようにするので精一杯で、全然堂々と
言えない。
試合ではあんなに突っ走ることが出来るのに。
こんな姿、仲間に見られたら確実にからかわれる。
ああもうこの際そんなことはどうだっていい。
俺は...やっぱりフラれるんだろうか?
恐る恐る顔を上げた。
「今のチョコね、実はバレンタインの試作品だった
んだ。」
「...えっ?」
それはつまりどういうことなんだって、俺の頭が
考える前に彼女は言う。
「バレンタインは甘さ控えめのチョコを作るから
また食べてくれる...?」
"もちろん"ってすぐに答えられなかったのは、その
時の彼女の笑顔が可愛すぎたから。
胸の中いっぱいに広がってく言葉には出来ないこれ
は断然、チョコより甘い─────。
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