チョコより甘い

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いつものように少しだけあるイートインスペースに 俺は、座って彼女を待つ。 すっかり習慣になってしまった部活後の寄り道。 正直、高校生の俺にとっては一粒500円はする チョコを毎回買うのはキツイ。 しかもそれが大嫌いなんだから更にキツイ。 でもそれ以上に彼女が好きなんだから仕方ない。 「お待たせしました。」 「ん?」 そう言って運ばれてきた皿の上にはさっき俺が注文 したチョコと、頼んだ覚えのないチョコが乗ってる。 俺が注文したのはビターな甘さ控えめのやつだ。 その横に、いかにも甘そうなハート型のチョコが 並んでる。 そのチョコを凝視してる俺に彼女は恥ずかしそうに 言った。 「これね、試作品なの。」 「試作品?」 「そう。私が作ったんだけど...味見してくれ ないかな?」 思わず顔を上げると、どこか照れ笑いを浮かべる 彼女が居る。 ダメだ。絶対に今ニヤけてるに違いない。 前に彼女はショコラティエを目指してるって言って いた。 そんな彼女が作る試作品を俺に味見して欲しい なんて。 嬉し過ぎるだろ。 「いただきます。」 自分が注文したチョコを後回しに、その試作品の チョコを手にした俺は浮かれててすっかり忘れて いたんだ。 ...チョコが嫌いだってことを。
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