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口に入れる前から漂う甘ったるい香り。
しまったと思ったけどもう遅い。
一口ずついくより一気にいってしまった方がいいと
判断した俺は、パクッと勢いのままそれを口に放り
込んだ。
「.....っ。」
やばい。
思ったよりずっとずっと甘い。
せっかく彼女の手作りなんていう最高のチョコを
食べることが出来たって言うのに、味わう余裕
なんか微塵もない。
口の中いっぱいに甘さが広がって、苦しくなった俺はつい飲み物に手を出してしまった。
勿体ないと思いつつも我慢しきれなくなって
飲み物で無理やりチョコを流し込む。
グラスを置いた俺ははっとした。
「...やっぱり美味しくなかったよね。」
彼女は申し訳なさそうに笑う。
「違う!そうじゃなくてっ...」
「ううん。気を使ってくれなくて大丈夫。」
最悪だ。
彼女の笑顔に会いにきたはずなのに、俺がその笑顔
を曇らせてしまうなんて。
ぱたぱたと瞬きをするその目は少し潤んでいる
ように見えて、胸が締めつけられた。
俺の嘘が彼女を傷つけてる。
「ごめんっ...!!」
ついに耐えきれなくなった俺は立ち上がって、これ
でもかってくらい頭を下げた。
「そんな、謝ることないのに。」
「俺...嘘ついてたんだ。」
「嘘?」
「.....本当は甘いものが苦手なんだ。」
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