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部活が終わって、用事があるからと適当に仲間を
撒いて走ること10分。
すっかり通いなれてしまった道だけど、未だに緊張
する自分が情けない。
試合だってこんなに緊張しないのに。
目的地であるいかにもオシャレな...本当だったら
こんな男子高校生が入るような店じゃない店の前で
思わず立ち止まる。
「.....。」
一応、学校を出る前に汗拭きシート+制汗スプレー
を念入りにしたから臭くはないはずだ。
でも気になってしまう。
息を整えて一歩足を踏み出す。
ドアを開ければたちまち鼻につく甘い香り。
チョコレート特有のやつ。
「...うっ。」
つい顔を手で覆いたくなるけど我慢だ。
そんなことしたら一瞬で俺の今までの努力が
消える。
何とか表情を作った俺は、つやつやとしたチョコが
並ぶショーケースに向かった。
本当だったらきっと美味しそうに見えるんだろう。
ただ残念なことに俺は甘いものが嫌いだ。
中でもチョコは一番嫌いだ。
じゅあ何でわざわざ決して安くないショコラトリー
に来ているかと言うと─────
「いらっしゃいませ。」
そう言って迎えてくれる彼女の笑顔に会うためだ。
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