チョコより甘い

1/5
前へ
/5ページ
次へ
部活が終わって、用事があるからと適当に仲間を 撒いて走ること10分。 すっかり通いなれてしまった道だけど、未だに緊張 する自分が情けない。 試合だってこんなに緊張しないのに。 目的地であるいかにもオシャレな...本当だったら こんな男子高校生が入るような店じゃない店の前で 思わず立ち止まる。 「.....。」 一応、学校を出る前に汗拭きシート+制汗スプレー を念入りにしたから臭くはないはずだ。 でも気になってしまう。 息を整えて一歩足を踏み出す。 ドアを開ければたちまち鼻につく甘い香り。 チョコレート特有のやつ。 「...うっ。」 つい顔を手で覆いたくなるけど我慢だ。 そんなことしたら一瞬で俺の今までの努力が 消える。 何とか表情を作った俺は、つやつやとしたチョコが 並ぶショーケースに向かった。  本当だったらきっと美味しそうに見えるんだろう。 ただ残念なことに俺は甘いものが嫌いだ。 中でもチョコは一番嫌いだ。 じゅあ何でわざわざ決して安くないショコラトリー に来ているかと言うと───── 「いらっしゃいませ。」 そう言って迎えてくれる彼女の笑顔に会うためだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加