ビター

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 そう決めて、家を出たのだ。  絶対に、絶対に、絶対に、帰らない。  ママが僕に謝って、ゲームを買ってくれるまでは。  だから、明日も学校に行かないで、ここにいるのだ。  そう思って、土管に入りなおそうとした時だった。 「わ、生きてる!」  そんな声が聞こえた。 「わっわっわっわっ!」  その声に僕はびっくりして、大声を出してしまった。 「大きい声出すってことは、幽霊じゃないんだ」  だけど、その人は僕の大きな声に構わないで、僕が入っている土管に近付いて来た。 「うわ、泥が付いたっっっ!」  近くの外灯のせいで、その人が「大人」だってことはすぐにわかった。 「ああそっかあ、今日雨降ったもんなあ」
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