ビター

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「ばあばに言ったら、ママがダメだって言ったことも、何でも大丈夫になったっ!」 「―で?」  でも、その人は全然変わらなかった。 「そのばあばとやらは、どこにいるのよ」  とたんに、僕は黙ってしまった。  ばあばは、いなくなってしまった。  「天国」というところに、半年前に行ってしまった。  ばあばがいなくなってから。  僕の言うことは、全部大丈夫じゃなくなった。 「……あんたのお母さんが、『ダメだ』って言うのは、別に意地悪じゃないと思うよ」  黙りこんでしまった僕に、その人は言った。 「どこがだよ!」 「少なくとも、あんたのばあばよりは、おかーさんの方が、あんたのことを心配してくれているとは思うわよ。あんたのばあばは、あんたを可愛がりたいって言う、自分の欲望を優先した。つまり、あんたのことより自分のことが大切だったってことだよ」
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