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『再生能力』
この世に二人といない天才だと思っている博士が、切れたトカゲの尻尾が再生するのを見ていてすごい発明を思いついた。
「人間にも再生能力が必要だ。再生能力が備われば病気だってなんだって治る」
博士は研究に没頭してついに人間の失われた部分を再生する能力を身につける薬を発明した。
「できた」
「博士やりましたね」
「あぁ、ついに私はやってのけたのだ。さぁ、助手くん、この薬を飲むのだ。そうすれば君に再生能力が身につくはずだ」
「本当ですか?」
「もちろんだ」
助手くんは博士の発明した薬を飲んだ。
ゴクッ、あっ、あぁ・・・あぁああ・・・。
博士はこの薬が成功したのか失敗したのか注意深く助手くんを観察した。
「さぁ、何か再生してみなさい」
「・・・だって、まだ全部揃ってます」
「そうか、それじゃ頭を落としてみなさい」
「嫌です」
「嫌だと言うな。きっと生えてくるから。もしかしたら今よりも頭が良くなるかもしれないじゃないか」
「嫌です」
「顔だって良くなるかもしれないよ」
「嫌です」
「仕方ない。頭が嫌なら、指ならいいだろう、指を落としてみなさい」
「嫌です」
「大丈夫。きっと生えてくるから」
「嫌です」
「仕方がないなぁ、それではしばらく待つから何か再生したら教えるのだ、わかったな」
「はい」
こうして助手くんは普段の生活をすることとなり、何か再生能力が発揮されたら博士に報告することになった。
しばらくすると助手くんが喜び勇んで博士の元にやってきた。
「博士、すごい発明です。薬は成功です。切っても切っても再生します」
「何本当か」
「はい。髪の毛が切っても切っても伸びてきます」
「うぅん、そうか。帰っていいぞ。もうちょっと様子を見ることにしよう」
するとまたしばらくして助手くんが博士のもとにやってきた。
「博士、すごい発明です。薬は成功です。切っても切っても再生します」
「何、本当か」
「はい。爪です。この爪が切っても切っても伸びてきます」
「うぅん、そうか。帰っていいぞ。もうちょっと様子を見よう」
するとまたしばらくして助手くんが博士のもとにやってきた。
「博士、すごい発明です。薬は成功です。切っても切っても再生します」
「何本当か」
「はい。鼻水がかんでもかんでもダラダラと出てきます。すごい再生能力です。博士、やりましたね」
「うぅん、もういいかな。実験は失敗だ。いいか助手くん、今後一切、博士すごい発明です。は禁止。もうそれを言うな。わかったな」
「はい」
「それじゃあ、帰っていい」
助手くんは帰ったがすぐにまた博士のもとにやってきた。
「博士、すごい発明です。切っても切っても涙が出てきます」
「助手くん、もうそれは言うな」
博士がそう言ってもすぐにまた助手くんはやってきた。
「博士、すごい発明です。切っても切ってもうんこが出てきます。途中で切ってもまた出てきます」
この時博士は実験が成功していることを知ったのだった。
「博士すごい発明です」
「博士すごい発明です」
助手くんの思考能力が再生していた。
『再生能力』でした。
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