13:試し(中編)

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13:試し(中編)

3日後。来たる決戦の日。 一応、準備はした。 何でも使って良いらしいので近所で戦闘に役立ちそうなものを買ってみたり、現代の武術の知識を思い立ち出しながら修行してみたり。 といっても、武術の方はあまり成果は出なかったが。 今向かっているのは店から徒歩5分程の距離にある空き地だ。彼女がここに呼び出した。 一応腰には刀、そして1冊の本を服の内側にしまってある。 石畳のような洒落た道を通る。道端には飲食店だったりが立ち並んでおり、人々で賑わっている。 そのまま道を歩いていると、正面にそれらしきものが見えてきた。別に特別広いという訳でもなく、現代にもあった平均的な面積のものだ。 …そもそも現代で空き地を見る機会が少なかったが。 柚月とケイはもう到着していたようで、遠目からでも分かった。向こうから話しかけてくる。 「ルールは分かっているわね? 私と貴方の1対1での戦闘勝負。 道具は基本何でも使って良いわよ。私も使うし。 本当に危ないのはやめてね。  …全力で来なさい。」 「ああ。もちろん。」 ここで上手く力を発揮しなければ。 「ケイは審判とかしてそこで見てて。 邪魔よ邪魔。どいたどいた。」 「僕の扱い酷くないですか⁉︎」 「気の所為よ。」 なんてやりとりしてるのを見ると、相当仲が良さそうだ。 彼女がそんなにコミュニケーション能力があるような人間には思えないのだが、どうやって仲良くなったんだろうか。…まあ考えても仕方ない。 渋々といった様子で彼が端の方に移動したところで、お互いに構える。 構えているのはどちらも刀だ。やはり自国の文化には愛着は湧くものか。 驚いたのはこんなに危険な品物が意外と簡単に手に入れることができた点だ。 どうやら向こうの世界より此処には危険が多いらしく、武器屋は需要があるらしい。 どちらも剣道でいうところの居合の構えをとっている。 「それでは…始め!」 声が響いた瞬間、どちらも限界の反射速度で足を前方に踏み出す。周りの空気が揺らぐ。物凄い気迫だった。 開始の位置の間隔10mの距離をお互いに詰めていく。 間隔が約3mになったところでお互いに抜刀。偶然かは分からないがタイミングはほぼ同時だった。 ただ俺の方の反射速度が若干上回った為、現時点ではこちらが有利だ。 俺は姿勢を屈めて下段からの攻撃。対してあちらは上段から剣を振り下ろすつもりだ。 少しの油断も許されないような緊迫した状況。 だが、負けはしないと言わんばかりに剣尖をお腹の真ん中あたりに当てにいく。 勿論、寸止めするつもりだが。 高速で振る俺の刀が命中__________する筈もなく、相手も急いで対応して刀で守る。金属と金属の音が響き、場は一時の静寂に包まれた。 このまま何回も攻めて体勢を崩せば_______その時だった。 柚月が俺の刀を"掴んだ"のだ。 刃のない部分を摘んだとかではなく、はっきりと剣の中腹部分を掴んでいた。だが、彼女の掌には傷一つ無かった。 一瞬動揺したが、もう刀は返してもらえないと判断して柄から手を離して後ろへ下がる。 途端、右手の刀での追撃が俺の右肩周辺に向かって振り下ろされる。風圧が体へ伝わった。 バックステップによって命中の寸前で回避するが、かなり危うい。 充分に距離をとったところで一旦精神を落ち着かせる。 「何で傷がつかない?」 「そういうスキルよ。 『鋼鉄肌』。強靭な皮膚を手に入れたのよ。 その刀じゃ私に傷はつかないわ。」 「アルビノのお前が太陽の下を歩けているのもそれか?」 「ええ。何も硬度を上げるだけじゃないもの。」 これは…どうやら相当不利なようだ。
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