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つまらない箱庭の日常を抜け出すために、そっと忍び込んだ小さな部屋。そこであなたは、凍えた目をしていた。
「だれ……?」
白い肌が震えている。電球の灯りだけが照らしたその姿は、弱々しくて、儚い桜のようだった。だから、思わず呟いたんだと思う。
「綺麗……」
「えっ?」
「あ、ご、ごめんなさい! 勝手に入っちゃって……! まさか、ここに人がいるなんて思わなくて……」
「……そっか」
慌てた言動につられることなく、独りぼっちの顔をしている。なんだか離れたくなくなって、小さな手で自分の心臓を握った。
「ねえ、もうずっとここにいるの……?」
「……そうだね。もう何年も、外には出てないよ」
そんなの、嫌。
「明日も、いる?」
「うん、いるけど……」
「じゃあ、明日も来る! 面白いもの持ってくるから! だから……!」
首を傾げるあなたの答えを聞く前に、勝手に約束した。
「だから、いなくならないでね!」
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