言えなかった嘘

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 人は贅沢だ。切望していたものを手に入れても、また次を欲してしまう。それを自分のものにできても、思い通りにならないと不満をもらす。 「だからね? 私は2人のためを思って言ったのに、全然わかってくれないの。ひどいと思わない?」 「あはは、しょうがないよ。その人たちにとっては、あまり得意なことじゃなかったんだから」 「そんなの、不公平だわ。自分たちでやらないのに、文句ばかり」  拗ねた子どものように頬を張ると、貴方は優しくフォローしてくれる。それを知っているから、つい嫌なことも話してしまうんだ。 「君は偉いね。文句を言いながらも、ちゃんと行動している」 「文句を言わない方が偉いんじゃない?」 「さあね。そんな基準、僕は知らないよ。人が掲げる一般なんて物差しで測らずに、君は自分を褒めて良いと思う」 「……ありがとう。そう言ってくれるのは、貴方だけだわ」 「それなら、良かったよ」  私はこんなに色んなものに染まって、変わってしまったのに、貴方はいつまでも変わらない。この部屋に来た時から、何一つ。それに安心感を覚えることは、依存と名付けられてしまうのかしら。 「……大丈夫?」 「え? どうしたの?」 「最近、僕の所に来ることが増えたから」 「ああ……うん、そうね。そう思うわよね」 「……」 「……明日から、また毎日来ても良い?」 「……もちろん」 「ありがとう」  最後に私は、きちんと笑えていたかな?
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