運命が動く

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買い物を終え食材のたくさん入った重たい袋を抱え川沿いの道をてくてく歩く。桜の花びらが春の風に吹かれてさらさらと舞う。 おばさんの迫力に負けたわたしはお刺身を譲り納豆を買った。 七階建てのマンション前に立つ。英美利ちゃんの立派な豪邸からこの家に帰って来るとなんだか惨めな気持ちになった。 英美利ちゃんはみんなから愛されて幸せな人生を送っている。欲しい物はきっとなんだって手に入る。羨ましいな。半額シールの貼られたお刺身の取り合いなんてすることもないだろう。 それにしてもどうしてお刺身を食べるつもりが納豆になってしまったのだろうか。自分が惨めに思えてくる。 「あ~嫌になる~おばさんにお刺身も奪われた~」 わたしは扉の前で思わず叫んでしまった。
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