運命が動く

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いけない扉の前で叫んでいると苦情を言われてしまうかもしれない。わたしは慌てて鞄から猫のキャラクターが付いた部屋の鍵を取り出して扉を開けた。 誰も居ない真っ暗な部屋に向かって「ただいま」と声を掛ける。もちろん返事はなくてシーンとしたままだ。 いつものようにベッドの上でわたしの帰りを待っているぬいぐるみの猫ぴーちゃんに、「ただいま」と挨拶をして頭を撫でた。 台所のテーブルの上に買ってきた食材の入っているスーパーの袋をドサッと置く。今日の夕飯は納豆ご飯と冷蔵庫の中にある野菜を使い炒め物でも作ろう。 次の給料日まで節約しないと。 キッチンに立ち炒め物を作る。キャベツともやしの炒め物だ。 「いただきます」と手を合わせてテーブルに並べたキャベツともやしの炒め物とマヨネーズをたっぷりかけた納豆を食べる。お米だけはたくさんあったのでお茶碗にご飯をてんこ盛りに盛った。 今頃英美利ちゃんは贅沢な食事をしているのだろうなと想像する。優雅に微笑みを浮かべる英美利ちゃんの笑顔がぱっと頭に浮かんだ。
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