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普段のわたしは短気ではなくてどちらかと言うと気が長いのにイライラして思わず店員さんに八つ当たりして情けない。
それもこれも突然解雇を言い渡されたせいだよ。悔しい、悔しいよと泣きそうになりながら川沿いの桜並木をとぼとぼと歩くわたし。真っ直ぐ続く桜並木はとても綺麗で桜の綺麗な世界に吸い込まれそうだ。
この川沿いの道を右に曲がりまっすぐ行くと実家があり左にまっすぐ行くとひとり暮しのわたしのマンションがある。
実家には姉の順子が住んでいる。姉の顔を見ると辛くなるのでわたしは実家から逃げた。
わたしはズルい女だと思う。
でも、仕方がない。さあ、家に帰ろう。
わたしは歩き出した。すると、その時スマホが振動した。画面を見ると『派遣会社うるなか』と表示されていた。
「はい、成田です」わたしは電話に出た。
すると、
「派遣会社うるなかの長崎です。成田さ~ん、とても素敵なお仕事が入ってきましたよ」
長崎さんのその声はそれはもう嬉しそうだった。
「えっ、お仕事の紹介ですか?」
わたしは、嬉しくなり飛び上がりそうになってしまった。
だけど、この電話がわたしの運命を左右するなんてこの時は思ってもいなかったのだった。
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