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晶もバイトを始め、光も日数を増やし始めた結果、思いの外、早く、転居費用は貯まった。
類に、
「喧嘩したときの為に二部屋以上はあった方がいいよ」
と、言われ、バイト先で2人は顔を見合わせた。
「喧嘩って、ねえ」
と、晶。
「だよねー」
と、光。
「なに?2人は喧嘩しないわけ?」
類に聞かれ、2人は同時に、
「喧嘩はするけど、数分で仲直りするので」
真顔で類に言うなり、
「なにそれ、ノロケ?」
逆に晶と光は、前のめりになった。
「喧嘩するんですか?店長とマフィさん」
一緒に飲んだ際、人前でもイチャつき、キスしていたくらいの仲の良さだったが為に意外すぎた。
「そりゃ、するよ。結婚してても他人だし、親子だって喧嘩くらいするじゃん」
確かに、と晶と光も納得する。
「余程、相性がいいんだな、お2人さん」
類の優しい笑みに晶も光も照れた。
2人で住んだ、晶の部屋。
もう荷物は運び出し、空っぽだが、思い出がたくさん詰まった部屋に、晶と光はしばらく立ち尽くした。
「...色々あったよね、この部屋で」
「うん。でもほとんどいいことばっかだった気するな」
光が笑みを浮かべ、そんな光を晶は見つめ、微笑んだ。
互いに
「ありがとうございました」
と、新しい部屋に向かう前、物はなにもなくても思い出の詰まった愛しい部屋に頭を下げた。
2人であちこち不動産屋に出向き、気に入った部屋もまた、互いに同じだった。
以前の部屋より僅かに広く、以前は2階だったが、5階で窓からの見晴らしもよく、ペットも可。
真新しいスカイブルーのカーテンを一緒に取り付けた。
ベッドもまた部屋も広い訳だけし、それに、光以外の男と寝た過去のあるベッドだからと晶はベッドも新調したい、と切り出し、真新しいダブルベッドを購入した。
「今日は引越し蕎麦?」
荷物を解いたりと作業の最中、互いにベッドに仰向けになり顔を見合わせた。
「引っ越し蕎麦はもちろんだけど。食うか食われるか、どっちがいい?」
光の言葉に晶は暫しなんの事か、と目を丸くしたが、すぐに意味がわかり、変わらず、光のエッチ!とバチン!と光の腕を思い切り叩く。
「うっ....」
と光は顔を顰め、腕を握った。
強く叩きすぎたかな、と慌てて、晶は上半身を起こした。
「ご、ごめん、俺、すぐ叩いちゃうよね...痛む....?」
「....骨、折れたかも....」
光の神妙な顔色と声に晶は反省した。
「びょ、病院、行こう、光」
「だな、恋煩い、て病だから痛くも痒くもないから心配....」
え?と晶が目を見開くと、光がにんまり笑う。
「もう!心配したんだから!」
またもや、晶が光をパチパチ叩きまくるが、光は笑った。
「....でも、俺も同じかも」
晶の小さな声に光がきょとんとする。
「俺も同じ病」
そう光に口元に笑みを浮かべ言うなり、晶は光の唇に口付け、光も笑みを浮かべたまま、瞼を閉じた。
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