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「....ごめんね、光」
「大丈夫!続き、貼って、晶!」
無邪気な笑顔で光は枕を抱いた。
「....叩いちゃって、ごめん」
「大丈夫。慣れてる。でも...俺もちょっと妬いちゃった」
「え?」
「店長としてる晶見て」
「....そんな風に見えなかった....」
光は口元に弧を描く。
「そりゃ、2人の性事情、知ってんの俺だけだったし...あ、店長とマフィは別ね」
「そっか、....そうだよね....」
ゆっくりフィルムを剥がし、今度は叩きつけずに光のお尻近くに湿布を貼った。
「....やっぱり、晶が一番」
「....俺も。こんな風に喧嘩してもすぐに仲直りするし、なんでも話せるし...」
正直なところ、晶は自分の嫉妬深さから相手が浮気してしまうことは気がついていたが、嫉妬する気持ちを抑える事が出来ずにいた。
自分の嫉妬深さも受け入れてくれたのは光が初めてだ。
「あっちの方も克服したしね」
枕に顎を乗せ、微かに笑みを浮かべ光が晶に言う。
「うん」
自然と晶にも笑顔が浮かんだ。
互いにやっぱり、晶は光、光は晶じゃなきゃ駄目だ、と思い知る幸せ。
「念の為、鎮痛剤も飲んどく?熱、出ちゃうかもだし」
「うん、ありがとう。晶」
「うん」
類は仕事が終わり、マフィと帰宅するなり、
「昨夜はごめんね」
と2人に手を合わせ謝罪した。
「僕達で解決しなきゃなのに巻き込んじゃって...光は体調はどう?しんどいようならシフト変更するから」
お詫びでもあり、立ち仕事でもある為、光に暫しの休暇をくれ、類はマフィから貰ったホテルのディナー券のチケットをペアでプレゼントした。
そうして、晶と光は間借りし、新しい部屋を借りる資金を貯める為に、晶も類に頼み、光と同じダイニングバーでバイトを始めた。
マフィは日本でイタリアンのお店を出店するに当たり、昼は不動産を巡り、夜は類に会いに類が店長を務める店に足を伸ばし、どうやら、気に入った物件がマフィは見つかったようだ。
その時にはイタリア語も出来、旦那でもある類に店を手伝って欲しい、とマフィは類に話した。
「店長がいなくなるのかあ、寂しくなるなあ」
光が肩を落とすと、
「別に海外に行く訳じゃないんだし、光と晶もその時は食べにおいで」
「店長のお店も美味しいけど、本場のイタリアンですよね、楽しみ!」
晶は素直に喜んだ。
「2人も。今までは晶の部屋に光が住んでた訳だろう?今度は2人で気に入った部屋を探して住むといいよ」
類に笑顔で言われ、晶も光も顔を見合わせ、笑顔になった。
2人で一緒に探し新たな愛の巣に住むまで、そう遠くはなさそうだ。
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