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序
今年もまた、桜の咲く季節がやってくる。
この季節を僕は好きになれなかった。浮足立つような、高揚した周囲の雰囲気に、自分が取り残されているような気分になるからだ。
やれお別れ会だ歓迎会だと、例年通り繰り返される些末な日常の変化にいちいち盛り上がることのできる他人の情緒に、どうしても馴染むことが出来なかった。
まして今年は、就職先も決まらないままこの時期を迎えてしまったとなれば、なおさらだった。
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