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3:当日
週末の花見当日は、一面満開の晴天となった。まだ午前中だというのに、既に公園内は多くの人々でにぎわい、すっかり宴の様相を呈している。
誰もが誰かと盛り上がり、会話に、遊びに花を咲かせている喧騒の中、僕は一人、所在なく公園内をぶらついていた。
というのも、花見は午後からの予定なのだが、家にいても妙に落ち着かなくて出てきてしまったのである。何せこのような集まりに参加すること自体そうとうご無沙汰なのだ。
僕は、自分で想定していた以上に緊張してしまっているようだった。
「今からでも断ろうか……、いや、もう遅いか、でも……」
何の問題もないと、粛々と乗り切るだけだと息巻いておきながら、自分の小心ぶりにはため息が出る。こんなことで今日一日を乗り切れるのだろうかと、甚だ不安に思う内心を押さえつけるため、公園内をとにかくうろつく。
ぶつぶつと心の不安を漏らしながら、当てもなくふらふらする僕の姿は、きっとこの人ごみの中にあってなお悪目立ちしていたことだろう。
ふいに、聞き覚えのある声が僕を呼び止めた。
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