2:帰り道

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彼女ほど人脈の広い人物であったならば、僕のような人間ともいい距離感でいてくれるだろうとか、こちらが不快になるような絡みはしてこないだろうとか。   「はぁ……何だそれ」    思わずため息がもれる。考えていて気付いてしまった。  僕は、なんて勝手な期待を彼女にぶつけていたのだろうか。  自己嫌悪に陥り、淀みなく踏みしめていた歩みが止まる。俯き、顔を手で覆い、どうしようもなく襲い掛かる後悔に堪えようとした。  久しぶりの感覚だった。それと同時に思い出される、他人と深く関わらなくなったきっかけ。  僕はまた、同じ過ちを繰り返しているのか。  一体どれほどそうして固まっていたのだろうか。一陣強めの風が背中をなで、体がぶるりと震える。3月と言えど深夜の空気はまだ冷たかった。  体をさすろうと、顔を覆っていた両手を外す。丁度街灯の下にいたようで、足元はうっすら明るかった。  灰色がかったアスファルトの地面に見覚えのある樹陰が映り込んでいて、自然と頭上へと視線が誘導される。  人口の光に照らされてギラギラと、夜風に揺れる桜が、花とつぼみを遠慮なくさらけ出す姿がそこにあった。思いがけず直視してしまった遺恨の対象に、いよいよ感情が冷めていくのを感じる。
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