smashing! すえぜんは ねてまつおれ

1/1
前へ
/603ページ
次へ

smashing! すえぜんは ねてまつおれ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そしてそこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。土曜の今日は午前中のみです。 だったはずだが、手術の予定がずれ込んだために今日まとめて行う事に。昨日出勤し今日は雲母宅にシケこんでいた伊達を「ギリ旬のハモ三昧」で釣り、数件の手術も無事終了。今日は交代で様子見、明日日曜に飼い主さんが迎えに来てくれる。 今回、執刀医は伊達。佐久間がほぼサポートに。どれも変わったケースだったため、良い機会なので佐久間は見学したかったのだ。伊達は快諾してくれ、普段のあのちゃらんぽらんさとは真逆の出来を見せつけたのだった。心なしか喜多村の目もハートになっていた(気がする)。 術後処置室を片付け、院内もざっと掃除。二人が二階リビングに入ると、先に上がった伊達はソファーの上で気持ち良さげに眠っていた。 「頑張ったわこの人。最短じゃないっけ今回の?」 「やっぱり伊達さんとこ病院大きいから、数扱ってると早いな」 普段あまり褒められない(ことが多すぎる)伊達が、聞こえているのかいないのかクフフとか笑っている。半目でヨダレだからこれは完全に寝てるな。喜多村と佐久間は、魚介類のルートに詳しいウミノ湯の羽海野真弓に頼んでおいた「ハモ」を取りに行くため、ついでに二人で銭湯入ってこムフ♡(喜多村)ということになり、テーブルの上にメモを残し、熟睡する伊達を起こしてしまわないように、そっと家を出た。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 「…そういえば誰もいなかったら、勝手に入ってってゆってたっけ」 佐久間イヌネコ病院・二階住居部分玄関。週末の今日、立ち寄ったのは設楽泰司。先日の「チキチキ!陣取りサバイバルゲーム!」以来、強制的に仲間に加えられた設楽。そのかわりいつ何時でもここに立ち寄ってもいい「おともだち権」をゲットしたのだ。 今日は佐久間の好物、チョコレートムース(ファーストセレブレーション・雲母セレクト)を手土産に、週末の酒宴にお邪魔できればと、けっこう気をつかった出で立ちでやって来たのだ。タイプライターコットンのパリッとしたシンプルなシャツに、細身のヴィンテージジーンズ(20万円)、あとこだわりのエアジョーダン。プラスお泊まりグッズ。 玄関脇のリイコに挨拶。彼は無言で鼻だけ鳴らし許可をくれた。もう顔見知りですねリイコ兄貴。もらった合い鍵で扉を開け中に。恐る恐る入ったリビングには、何故かスクラブ姿のままでソファーに転がる設楽のセ友・伊達雅宗。アンタがなんでここにいんの、ちょっと。 「ね伊達さん、起きて。なんでこんな格好で寝てるんですか」 「…うーん…疲れたから……してえ」 「…なに?」 「…ちゅーして…疲れた…から…」 毎度寝言からして破廉恥だな。設楽は伊達の上に跨がり、押さえ付けるようにその無防備な唇を食らった。いきなりトップギア状態で激しく暴かれるようなキスに、寝ぼけ眼の伊達も流石に覚醒した。 「…へ、はっ…!あれ?設楽なんで…」 「…俺だとがっかり?」 「そうでなくて…あいつらは?あれ?」 設楽はテーブルの上に置かれたメモを伊達に見せると、伊達は溜息なのか叫びなのかわからない奇声を上げ、ソファーに倒れ込む。あーでも手術終わったよかったん。ご褒美にちぃたんがしてくれたんかと思ったチュー。それを聞いて跨がったままの設楽がゆらりと伊達に迫る。 「喜多村さんのチューのがよかった?」 「…ていうかお前なんか、今日サカッてんね珍しく」 「…なんだろ…ここに伊達さんいるって思わなかったから」 「今日はね手術で呼ばれたん。ハルちゃんお仕事だからさ、いまからみんなでハモ食べるんよ。お前運がいいね」 フヒ。なんだか嬉しそうにも見えるその顔が憎らしくて、設楽は再度唇を重ねる。伊達の足が設楽の腰に絡みつき、隙間無く触れ合う身体が熱くなりかけたとき、不意に離れた伊達が設楽の肩を押し、ソファーから起き上がった。 「も、あいつら戻ってくるだろうから…俺、着替えて風呂入るわ」 設楽も別に入ってきてもいーよ?別に。大きな声で呟きながら伊達は風呂場に向かった。テーブルの上に投げ出された伊達の携帯の画面。「ちょっと遅めになるから待っててね伊達さん」佐久間からのメッセージ。 その「ね」の使い方が反則なんですよ佐久間さんは。萌えで頭パーンなりながらも、今や俺の股間が限界突破でパーンなんです。 「し だ ら」 風呂場に向かう廊下でニヤつくあの愛するセ友に引き寄せられるように、設楽はふらりと、ソファーから立ち上がった。
/603ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加