smashing! しあわせとラブとうんめいと・中

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smashing! しあわせとラブとうんめいと・中

070e9e6b-891f-4190-8a44-1d90c12c1698 093d86c1-f7ab-49b6-9329-b98a355c813e 中立地点広場。 喜多村率いる「BLACK」はここから二手に分かれる。広場と言ってもそれほど視界は開けていないので気付かれにくいだろう。反対側に向かった喜多村・結城ペアからの合図。小越はゆっくりと単独で進む。その後を少し遅れて、木々の間をすり抜けながら続くのはマスター岸志田。 「中立地点」広場の隅に設えられた簡易トイレ。敵陣営ラインも近いその側では…。 「…っ…ちょ、も、どけって!戻らないとハルちゃんたちが!」 「ここ中立だしまだ雲母さんから指示ないし…も少し」 中立どころかもういろんな部分がタっちゃってますけど?な二人組が。アイタタ…小越は全身脱力し掛けたが気を取り直し、ハンドガンに手を掛けた。 「ごめん設楽さん」 パン! 小越の放ったBB弾は、伊達の上に乗り上げた設楽のむき出しのお尻にヒット。「いて」間抜けな声を上げた設楽はそれでも退こうとしない。 「中立地点じゃノーカンだね」 「設楽さんそこ、ギリ違うと思うよ?」 「えマジ?」 伊達と設楽がおっぱじめた地点は簡易トイレの裏側。伊達が逃げを打つ度にジリジリと設楽が迫った代償として、二人して中立エリアから自陣営にギリギリ入り込んでいたのだ。しまったついコーフンして。設楽が呟いたその時。いつの間にか茂みから現れたのは、設楽側である「RED」佐久間。 パン!!…パン!! 「しまっ…」 その弾は「BLACK」小越の靴先を弾いた。丁度設楽を狙うため、中立地点から「RED」陣営に踏み込んでしまっていた、その足に。 「たいちゃんお疲れ。えっと、その…下履こか…」 「あ、そうだった。ほら伊達さんも自分で着て」 「もっと優しくして!」 伊達の首のリードを手に「RED」拠点に戻っていく佐久間の後ろを、設楽、そして小越の離脱組が続く。木の陰で気配を消したままの岸志田に、小越は振り返ることなく小さなハンドサインを送った。 (あとはよろしく、マスター) 喜多村チーム「BLACK」 小越優羽× 雲母チーム「RED」 設楽泰司× ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「鬼丸くんお手柄でした。それに、深追いはしない方がいい」 「…深追い?」 「…おそらく、小越くんの近くにいたはずです。マスターが」 「え!あの辺見たけど誰もいなかったよ?」 「ンフ…そこが彼の狡猾なところでしょうね」 一方、「RED」拠点を目指すは「BLACK」喜多村・結城。 ついさっき中立地点あたりで聞こえた銃声。小越はうまくマスター岸志田を残してくれたはず。喜多村は辺りに注意を払いながら、いちいち虫に怯える結城に声を掛ける。 「大丈夫だよすぐるん。虫襲ってこないから」 「…なんかさでっかいの多くない?…カブトムシとか」 「え?何て?何がいた?」 「だから、カブトムシとかクワガタとか、大きいのばっか」 「…こんな時間に…」 そういった昆虫は日が高くなると土中や葉陰に身を潜めるものだ。それが表に現れてるってことは、なんらかの細工がされている。木の幹に蜜を塗ってあったり、雄同士を近づけて設置したり。森林に慣れていないものは、生命の気配を見つけると安心してしまいがちだ。ここは安全なのだ、と。 そうか。虫が置かれているところ、そこが罠か。 「卓、多分こっちはアウトだと思う。虫がいない方へ行こう」 「えどゆこと?」 人目に付くように虫が設置されている、即ち、そこには人の手が入っていると言うことだ。 「…!!ギャーーーーーー!!」 「卓!」 パン!! 浅く掘られた穴に仕掛けられたトラップ。結城は足を取られたその隙に、いつのまにか木陰に立っていた雲母に、背中から撃たれた。反射的に放った喜多村のBB弾は、細い木々、生い茂る細かな枝に弾かれ雲母には届かない。足場を前もって整えてあったのか、優雅に水の上を滑るように雲母は喜多村から距離を取る。 「ごめんちぃたん!」 「…ハルちゃん…」 「ンフ、向こうでお待ちしてますよ、千弦くん」 喜多村チーム「BLACK」 結城卓× お互い生き残りは リーダー+1名 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 数日前。佐久間イヌネコ病院二階リビング。 「マスター、ゲーム好き?一緒に新しいのやんない?」 喫茶メケメケで出している裏メニューを届けにやって来た岸志田は、満面の笑顔でテレビの前に陣取る喜多村と、よく結城と一緒に店に来るので仲良くなった庭師の小越に誘われたのだ。画面を見るとそれはシューティングゲーム。自分の得意とするジャンルのものだ。始めた途端あっさりとスコアを書き換えてしまった岸志田に心底感動する二人。 「…マスター上手いな。なんだろ、ピアスいっぱい開けると心に風穴が開くの?」 「??風穴は開かないけど、物が引っ掛かる。で千切れる」 ギャア!喜多村と小越が耳を押さえて悶絶している。大学でハマッたんだよねクレー射撃。淡々と「ハマッた」言われても説得力ないな。岸志田はコントローラを置くと、リビングの片隅で何やら奮闘している佐久間に声を掛ける。 「院長、手伝う?」 「ああ、ナナセくんか大丈夫…あれ?いつ来てくれてた?」 「けっこう前。今までゲームもしてたんだけどね。それ何?」 「あ、これはね…」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (あれ見ちゃったらサバゲー参加するしかないよな。ていうか…あそこだよな拠点。伊達さんだけ…他はいないな。でも隙が全然、ない) 小越が「RED」佐久間に撃たれ離脱後、マスター岸志田はひたすら林や藪の中で気配を消して行動していた。木登りも得意なのだがここでは目立ってしまい危険。木の陰に隠れ時折辺りを伺う様はまるで「猫」。 拠点に動きがあった。離脱組に結城が加わっている。よかったウチのリーダーじゃない。いたら終了だしね。雲母と佐久間がディレクターズチェアに腰掛ける。離脱組は隣のタープの下にまとまってる。なんか食ってるし、寝てるのもいる。そんで設楽くんは伊達さんのつけシッポをひっぱってるな。何が何でもちょっかいかけたいんだな。なんかここで頑張ってるのアホらしなってくるけど、それも罠だ。 でもまあ、行くか。 「盗聴器は残らず回収されてしまったようですね。おそらくはマスター。思わぬ伏兵です」 「ハルさん、あとは千弦とマスターだ。俺らどう出る?」 「…僕たちの役目、覚えていますか?」 「えっと、拠点と伊達さんを護る…」 「その通り。全力で護りに入りましょう」 岸志田はあらぬ気配を感じ、側の木に素早く飛び移る。同時に、足下に隠されていたであろう細い無数のロープが一斉に引き上げられた。拠点に立つ大木を中心にすり鉢状に張り巡らされている。周囲が丸見えだ。逆にどこから進入されても対処出来るのか。これは…中々。 「うっわ 一気に入れなくなった…」 数メートル先、上方から聞こえた声。それは自分と同じく木に登った状態のリーダー喜多村だった。岸志田は軽々と枝を伝って近づき、小声で話しかけた。 「喜多村くん喜多村くん、聞いてもいい?」 「うっわビビッたぁ!いるならいるってゆってよマスター…」 「やっぱりこれ、雲母さん側に勝たせようとしてる?」 「…マスターの脳内でどういう結末に…」 さすがに声を抑えつつ、二人は手持ちのアイテムを出し合いそしてぬかりなく装弾する。目前に迫る、最後の砦を打ち破るために。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 下に続きます! 上コチラ↓ https://estar.jp/novels/25802785/viewer?page=181&preview=1
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